放置、ぐちゃぐちゃ、学校プリント ファイル1枚で解決
長い休校期間の続いていた地域もありました。ようやく再び学校が始まったところでしょうか。
今回は、久しぶりのリョウさんのお話ですので、ちょっと復習を。
リョウさんはADHDの女性です。数年前に結婚した夫と今年4月から1年生になる娘がいます。娘は小学校が休校となったためずっと家にいましたが、ようやく今月になって登校することになりました。
しかし、学校が始まった途端、リョウさんの元には大量のプリントの山が。
時間割や持ってくるものを知らせる学級だより、家庭状況調査票、健康調査票、運動能力調査票、学習道具の申し込み案内、PTAのお知らせ、1回目の授業参観のお知らせなどなど。
リョウさんは目が回りそうでした。
リョウ「なんでこんなに大量なの・・・え?あさってまでにお釣りのないように380円?小さな封筒に入れて?え?来週の授業では、曲がるストローと牛乳パックを使いますのでお子様に持たせてください?え!」
ざーっと目を通しましたが、情報の洪水の中で溺れてしまいそうでした。
リョウさんは、なんとか書類を作成し、持っていくものを準備しても、その次の日には我が子がまた別の大量のプリントを持ち帰ります。
リョウ「え?分散登校の日程が変わったの?給食始まるの?え?エプロンがあさってまでいるの?」
コロナの影響で予定変更も通常より短期間にしばしば起こっているようです。
リョウさんは疲れ果ててしまいました。
みなさんはこうした学校関係の書類の山をどのように頭に入れて、忘れず漏れなく提出したり、日時を覚えていて参加したり、必要なものをそろえてもたせたりしていますか?
プリント問題の4ステップ
前置きが長くなりましたが、今回から数回にわたり、この学校プリントの洪水への対処をご紹介します。誰にとっても大量のプリントの情報を処理するのは難しいことですが、ADHDを抱えた人には、なおさらハードルが高くなると言われています。情報でも物でも整理整頓が苦手なのです。情報を整理するには、心を落ち着けて、それらになんらかの法則を見いだしたり、自分なりに秩序を構築したりする必要があります。ADHDの特性が強い人は、こうした整理整頓をする時間をそもそもとらない(それ以上に興味のある活動に飛びついてしまう)ことや、整理を始めても集中力が続かないのでじっくりと整理整頓の仕組みを作り上げるに至らず途中で放り出してしまうのです。ここでは、こうしたプリントの山問題の解決に役立つ情報をお伝えしようと思います。
プリントを巡るトラブルには行程があります。
①我が子が学校からプリントを持って帰らない問題(低学年に多い)
②持って帰ったとしてもランドセルの中でぐしゃぐしゃ放置問題
③プリントを親が受け取れたとしても保管場所と内容覚えておけない問題
④後日プリントで情報が更新された場合に混乱する問題
今回は①と②について話をします。
もらったプリントどうしてる?
①我が子が学校からプリントを持って帰らない問題(低学年に多い)
これについては、まず我が子にプリントをもらう状況、学校でランドセルに荷物を詰める状況などを詳しく聞いていきます。
たとえば、
・帰りの会でプリントをもらうのか?
・プリントをもらう時間と、ランドセルにしまう時間にはタイムラグがあるのか?
・もらったときに、いつもならどこに置くのか?(敗因がわかります)
・そのとき机の上にランドセルはあるのか?
・ランドセルに入る大きさにプリントをたためるのか?
・教科書などが多すぎてランドセルに入らないのか?
うまく言葉だけで説明ができない子どもも多いはずです。
おうちのテーブルにランドセルをのせて、どんなふうにプリントが配られるのか、実際動きながら聴き出すと、わりとうまくいきます。
リョウさんも、娘と一緒にやってみました。
「プリントをきれいにたためないし、ランドセルの隙間に入れるのがうまくいかず、机の引き出しに放置しちゃうんだ」
そんな発見があったようです。リョウさんはこう言いました。
リョウ「きれいにたたむのがまだ難しかったら、とにかくこのファイルにぐちゃぐちゃでもいいから全部入れてごらん。そしてランドセルに教科書よりもなによりも先に入れるの。そうすると必ず入るからね」
娘「わあ!これかわいい!」
どうでしょう。こんなふうに我が子がなんとか持ち帰る実際的な方法を教えるのです。
リョウ「ほら、このファイルで一回やってみてごらん」
おうちでリハーサルするといいでしょう。
ファイルはクリアか半透明の中身の見えるもので、できればスライドチャックつきの、誤って落とすことのないものにしましょう。
②については、以前もこのコラム内でお伝えしましたが、帰宅した子どもが家の中をどのように動くのか、動線を明らかにします。玄関から子ども部屋へ行き、ランドセルと帽子をおいて、水筒とプリントだけを手にとってリビングにいるお母さんに手渡す。その後、洗面所に行って手を洗い、リビングでおやつを食べる。
こんなふうに行動の流れを作ってあげることで、プリントを出すという新しい習慣がつきやすくなります。
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- 中島美鈴(なかしま・みすず)臨床心理士
- 1978年生まれ、福岡在住の臨床心理士。専門は認知行動療法。肥前精神医療センター、東京大学大学院総合文化研究科、福岡大学人文学部、福岡県職員相談室などを経て、現在は九州大学大学院人間環境学府にて成人ADHDの集団認知行動療法の研究に携わる。他に、福岡保護観察所、福岡少年院などで薬物依存や性犯罪者の集団認知行動療法のスーパーヴァイザーを務める。