(社説)大学2年生 対策急ぎ「危機」回避を

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 昨年来のコロナ禍に、各大学は構内への立ち入りを制限したり、オンライン授業に切り替えたりして感染の抑止に努めてきた。影響はすべての学生に及ぶが、とりわけ気になるのは昨春入学した2年生の様子だ。

 全国大学生活協同組合連合会が7月に行った学生アンケート(7832人回答)では、「意欲がわかず無気力に感じる」「友人とつながれていない」などの不安を訴えた割合が2年生に特に多かった。不眠、だるさといった体調の異変に関する質問への答えも同様だった。

 大学はこうした切実な声に耳を傾け、ケア体制の充実に急ぎ取りかかってもらいたい。行政による支援も必要だ。

 2年生は入学直後に最初の緊急事態宣言が発出されるなど、コロナ禍に翻弄(ほんろう)されてきた。感染対策が定まらないなか多くの大学がキャンパスを封鎖。教員側の準備も十分でないまま、パソコンなどの画面経由で授業に臨む日々が始まり、サークル活動なども禁止となった。

 その後、対面授業が始まり、種々の制限も順次緩和された。だがアンケート結果からは、十分に人間関係を築けていない学生の姿が浮かび上がる。

 友人が「ゼロ」と答えた2年生は、1年生だった昨夏アンケート時の28%から7%に減った。ところが、「いっしょに授業を受ける友人がおらず居場所がない」との答えが28%もあった。今年の1年生の20%よりも高い数字だった。

 各大学はいま、他の学年よりも対面授業の時間を多くするなど、入学から日が浅い1年生のケアに力を入れる。それ自体は意義ある取り組みだが、サポートが行き届かない2年生に不安や不満が強まっているのも事実だ。大学の相談窓口を利用する2年生が増えているといい、対面授業がないことを理由に学費の一部返還などを求めて裁判を起こしたのも2年生だ。

 専門家は、孤独感が強い学生は中退する危険が高いと指摘する。これまでのところ国や大学の経済支援策が一定の効果をあげ、懸念された中退者の激増という事態には至っていないが、気を抜くことはできない。

 オンライン授業のときも、小グループで対話できるシステムを利用して学生同士のやり取りを増やす▽工夫して顔を合わせる場を設ける▽将来に不安を抱く2年生が多いため、例年よりも早く就職支援を始める――といった提案もされている。

 大学がそれぞれの責任で取り組むのはもちろん、国も参考になる事例の共有を図ったり、必要に応じて財政支援策を講じたりして、「2年生の危機」の回避に力を尽くしてほしい。

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    常見陽平
    (千葉商科大学准教授・働き方評論家)
    2021年8月18日7時22分 投稿
    【提案】

    学生、労働者諸君!我々、リベラルの頼もしい砦たる朝日新聞が、雷鳴を貫ぬく自由の太陽のように、社説で「大学2年生」問題に光を当てている。 ILOの報告書では「ロックダウン世代」という言葉が登場している。新型コロナウイルスの影響で、教育や

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