(社説)東京都議選 菅政権への厳しい審判

社説

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 おとといの東京都議選で、前回歴史的大敗を喫した自民党は、辛うじて都議会第1党の座を取り戻したが、公明党と合わせて過半数という目標には届かなかった。感染が再拡大している新型コロナ対策や目前に迫る東京五輪への対応など、菅首相の政権運営に対する都民の厳しい審判とみるべきだ。

 4年前、小池百合子都知事の全面支援で旋風を起こした地域政党「都民ファーストの会」の退潮を見越し、大幅な勢力回復を当て込んだ自民党の目算ははずれた。33議席は、直後の衆院選で政権を失った09年の麻生政権下での38議席に及ばない。事実上の敗北といってもいい。

 首相はきのう、選挙結果を「謙虚に受け止める」と語ったが、うわべだけの言葉では信は得られないと、心すべきだ。

 与党内では、ワクチン接種をめぐる混乱が「逆風」になったとの見方が広がる。

 加速化の旗をふる首相の下、幅広く職域接種を呼びかけたが、ワクチンの供給不足で休止に追い込まれた。はしごをはずされた形の関係者の間に、戸惑いや不満が広がるのは当然である。政府の準備や説明は十分だったか、反省が必要だ。

 東京五輪についても、「開催ありき」で突き進む政権と都民の意識の乖離(かいり)は大きかった。

 朝日新聞が告示後に都民を対象に行った世論調査では、延期・中止が6割、開催する場合も無観客が6割超を占めた。首相が繰り返す「安全安心な五輪」に、足元の都民が信を置いていないことは明らかだ。「無観客」での開催を公約に掲げた都民ファが自民に迫る第2党となり、「中止」を強く訴えた共産党が議席を積み増したことを重く受け止めねばならない。

 首相は告示日に党本部前で第一声をあげただけで、街頭演説は一度も行わなかった。コロナ禍で人が集まる「密」を避けたという言い分はわからぬでもないが、この機会に自らの政策を国民に直接訴えたいという意欲は感じられなかった。

 有権者数が多く、無党派層の割合も高い都議選はこれまで、その後に控える国政選挙の結果を先取りするケースが多かった。各党が今回、秋までにある衆院選の前哨戦と位置づけて力を入れたのもそのためだ。

 立憲民主党は、ほぼ倍増したとはいえ、もともとの議席が1桁だった。民意を引き寄せる力強さに欠け、政権批判の受け皿としては都民ファが勝った。野党共闘については、定数1~2人の選挙区を中心に、立憲、共産両党が候補者をすみ分けし、一定の成果につながった。選挙区ごとに検証を進め、衆院選に向けた教訓とすべきだ。

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