(社説)温暖化対策法 実質ゼロの歩み加速を

社説

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 温室効果ガスの排出を2050年までに実質ゼロにするという政府の目標を明記した、改正地球温暖化対策推進法が成立した。菅首相が4月に打ち出した30年度までの46%削減を確実なものにし、上乗せを目指す様々な施策を加速させるべきだ。

 改正法は、世界の平均気温を産業革命以前と比べて1・5度上昇までに抑えるよう目指すパリ協定を踏まえることも、基本理念に掲げた。数値目標を法律にした意味は大きい。

 「50年までに実質ゼロ」を表明した自治体は400近くに達し、脱炭素経営に取り組む企業も増えた。政府や自治体、企業はこれを機にさらに、温暖化を考慮した政策や事業に注力することが望まれる。

 環境省の試算では、国内の再生可能エネルギー発電の潜在力は経済性を考慮しても、今の年間電力供給量の最大2倍ある。それをできるだけ生かすよう今回、都道府県や中核市以上の自治体は再エネの導入目標の設定が義務づけられ、市町村は再エネ事業の「促進区域」を定める努力義務も盛り込まれた。

 再エネ施設は歓迎されるとは限らない。太陽光発電の反対運動や風力発電を巡る紛争も相次いでいる。促進区域は、自治体が住民と話し合って、トラブルを防ぎ、地域の発展にもつなげ、導入を促す狙いだ。地域で電力を自給できる仕組みは災害時にも役立つ。事業者にとっても行政手続きが簡略化され、トラブル回避で事業の可能性を見通せるメリットがある。

 実行にあたっては、地元で丁寧に合意形成するとともに、環境や景観、生態系への影響、事故や自然災害への対策を十分検討したうえで進めるべきだ。温暖化対策に携わる人員が足りない自治体には、政府の支援も必要だろう。

 企業が政府に提出した事業所ごとの排出量は、これまでは情報公開制度で請求があれば公表されたが、請求なしでも公表されるようになる。公表までの期間も2年から1年未満に短縮された。排出量削減に対する姿勢の透明化が進み、企業は一層の努力が求められる。

 国内外で再エネ発電やエネルギー貯留方法など新技術の開発競争が激化している。環境問題への姿勢が、その会社への投資や製品購入を判断する材料にもなっている。企業は逆風ととらえず、信頼や国際競争力を高める好機として、自ら積極的に情報を開示してほしい。

 排出を実質ゼロにする目標の実現は容易ではない。政府が策定中のエネルギー基本計画でも、再エネの拡大をしっかり位置づけ、達成への道筋を明確に描かねばならない。

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