(EYE モニターの目)今月のテーマ:社説について
■ほかの記事と連動して
社説についてひとつ指摘したいことがある。社説は新聞社の意見を広く示す欄であり、どの社会問題について書いても問題はないだろう。しかし、読者としては、今世間で最も注目が集まっている事柄についての意見を知りたい。一番わかりやすいのは、1面で掲載した事柄について書くことではないか。そうすれば、紙面のほかの記事との連動も生まれる。内容に関して言えば、朝日新聞の社説は、しっかり論拠を明記して適切な指摘がなされていると感じている。(荒浜慶多 18歳 千葉県)
■言葉がきついと読む気が
4月3日の見出し「エネルギー企業 脱炭素へ率先して動け」は命令調なので、「率先して」で終わるか、あるいは「率先していこう」などとしたほうが、インパクトは弱いものの、受け入れやすいと思う。訴えたい気持ちは分かるが、社説の言葉がきついと、それだけで読む気がしなくなってしまう。また、3段目の第2段落に「今後は利用者が温暖化防止の努力に参加できるよう」とあるが、見出しにも「利用者」と入っていると、私のように科学が苦手な人間でも読みたくなる。(足立こずえ 67歳 広島県)
■その提言、我が身はどうか
4月1日の「男女格差 政治に平等の思想を」は、どこかひとごとだと思った。約30年間、複数の会社で働いてきたが、男女格差を感じずにはいられない。日本企業よりは外資系企業のほうが平等で、働きやすかった。果たして新聞社はどうなのだろう、と興味をもって読んだが、社内の男女平等に関する努力についての記述はなかった。新聞社は社会を先導する役目を持つ。女性が長く続けられる、働きやすい工夫はされているのだろうか……。疑問を投げかけたくなった。(伊藤愛子 48歳 福岡県)
■顔が見える記者が意見を
今の時代に社説が必要なのか? 私は要らないと思う。論説委員たちが討議し多様な考えをまとめた当たり障りのない意見にしても、社の方向性が偏るような意見にしても、要らない。朝日はこうあるべきだと縛られてしまうと、「今日の社説も至極まっとう。読む必要性を感じない」となる。社説よりも、顔が見える各記者が取材の結果などから考えた意見を読むほうが、新聞というメディアならではの視点を増やせるのではないだろうか。そのほうがSNSの時代にふさわしい。(加藤誠哉 44歳 神奈川県)
<謙虚に、声低く、健全な言論空間へ力>
平日午前11時、論説委員室の会議が始まり、社説のテーマと内容を話し合います。コロナ禍でリモート、参加者はざっと二十数人。例えば緊急事態宣言について議論が白熱し、2時間に及ぶことも。朝日新聞としての主張である社説はこうして合議でつくられます。編集委員らが個々の考えで書く署名コラムなどとの違いです。
言論の「広場」としての役割を新聞が担うことを私たちは重んじます。社説が読者の「声」や社内外の筆者の論考に囲まれているのは、そのためです。様々な主張が、時に競いあい、時に響きあい、議論が深まる。それが理想です。
つまらない。難しい。こうしたご意見は絶えません。平板になりがちな顔つきに変化を与えるため、イラストや図を使う実験も時にはしてきました。週1回の「社説余滴」では、論説委員が署名入りで個人の見解を書いています。
批判ばかり、上から目線、との指摘もいただきます。ただ、自由や人権、法の支配、民主主義といった大切な価値や仕組みが損なわれると判断する時は、厳しく言わねばなりません。
常に我が身を振り返り、「謙虚に、声低く語れ」と自省しつつ、健全な言論空間を保つために力を尽くします。(論説主幹・根本清樹)
◇東京本社発行の朝刊、夕刊の最終版をもとにしています
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