(社説)中国の国防費 軍拡が不信の連鎖招く

社説

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 中国の唱える「平和発展」をどう信じろというのだろうか。これほど軍拡を続けるのは、なぜなのか。周辺国の不安と警戒が高まるのは当然である。

 中国の全国人民代表大会が開幕し、今年の国防予算案が公表された。

 前年と比べて6・8%増の1兆3553億元、日本円にすれば約22兆6千億円である。

 米国に次ぐ世界2位の巨額予算であり、日本の防衛費の約4倍にのぼる。

 伸び率は過去2年間下がっていたが、今回は上向きに転じ、前年比で0・2ポイント上がった。

 中国経済はコロナ禍の影響からいち早く回復したが、昨年の成長率は2・3%だった。今年の成長目標としては「6%以上」を掲げた。

 国防予算は、その数字も上回る増強である。軍事優先の姿勢がより一層、鮮明となった。

 李克強(リーコーチアン)首相は「国家の主権、安全、発展利益の堅守のための戦略能力を高める」という。しかしもはや到底、専守防衛とはいえず、予算の内訳も不透明だ。脅威の下にあるのは中国ではなく、周辺国の側である。

 米国防総省は昨秋の報告書で、中国海軍の艦艇数がすでに米海軍を上回ったと指摘した。人工知能やサイバー、宇宙などの新たな分野でも技術の発展は著しく、核弾頭の数も着実に増えているとされる。

 目的は何か。習近平(シーチンピン)国家主席は4年前、今世紀半ばまでに中国軍を「世界一流の軍隊」にするとの目標を掲げた。昨秋は、建軍100年に当たる2027年までの「奮闘目標」も訴えている。いずれも、米国と均衡する軍事力を段階的にめざそうとしているとみられている。

 実際の軍の動きも危うさを増している。南シナ海では、演習や新型ミサイル実験を活発化させている。台湾への挑発的な動きも目立ち、米中の軍事的な緊張が高まりつつある。

 不信の連鎖が招く軍拡競争の激化を深く憂慮する。

 コロナ禍を通じて世界が学んだのは、感染症対策や気候変動など国境を越えた地球規模の課題に取り組む重要さだ。

 どんな大国も、単独では問題を解決できない。国民一人ひとりの利益と安全を守るためには、国際的な協調を高めて対策を探るほかない。

 自らを「責任ある大国」と言うならば、いま中国がすべきことは他国を威圧するような軍事力の増強ではないだろう。

 必要なのは、地域の緊張緩和に向け、軍縮や軍備管理の国際連携に主導的にかかわっていくことだ。武力を誇示するばかりの大国主義は決して尊敬されず、平和と安定も築けない。

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