「社会人失格」「なめてる」ミス責めるのやめた JR西に起きた変化
107人が死亡した2005年のJR宝塚線脱線事故の教訓を受け、JR西日本は人が犯すミスへの考え方を大きく変えた。人間科学に基づく新しい考え方を採り入れ、運転士らのミスを原則処分しない運用を導入した。25日で事故から20年。教訓の現在地を追った。
電車を脱線させた運転士の「事故前」に、変更の理由がある。
この運転士(当時23)は脱線事故の約1年前の04年、京都府内の駅で約100メートル、停止位置を行きすぎるミスをした。
「社会人としても失格だ」「運転士の仕事をなめているとしか考えられない」
助役ら3人から厳しい事情聴取を受けた。訓告の処分を受け、期末手当も減額。計13日間の日勤教育では、「最近、運転士となり一人前になったという、自分のうぬぼれについて」など計20項目のリポートを書いた。
翌年の4月25日。運転士は、JR宝塚線の伊丹駅で約70メートル行きすぎた。国土交通省航空・鉄道事故調査委員会(事故調、現運輸安全委員会)の報告書によれば、行きすぎた距離の虚偽報告を車内電話で車掌に依頼。直後にブレーキをかけ遅れ、速度超過でカーブに進入して列車が脱線した。
事故後の複数の事故検証が、日勤教育や懲戒処分といった個人の責任を追及する同社の運転士の管理方法は「逆に事故を誘発する」と指摘。人間科学に基づいたミスへの知見を導入するよう同社に求めた。
人のミスについての知見を同社に助言した芳賀繁・立教大名誉教授(交通心理学)によれば、ミスの従来の考え方には、不注意によって起き、罰すれば再発を防げる、といったものがある。事故前の同社だけではなく、今も社会に根強く残る考え方という。
「本人しか知り得ないミス」の報告が
しかし、1960年代ごろに…