(社説)共通テスト 指摘受け止めて改善を

社説

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 初めての大学入学共通テストが全日程を終え、各科目の平均点の最終集計なども先日発表された。感染防止対策の徹底が求められる難しい運営となったが、大きなトラブルがなかったのは何よりだった。

 ただ出題内容については疑問や課題も指摘されている。文部科学省や入試センターはこうした声を受け止めつつ結果を分析し、来年のテスト、そして24年度以降に控える次の入試改革に生かさなくてはならない。

 共通テストは、知識に加えて思考力・判断力・表現力を測る目的で、従来のセンター試験にかわって導入された。

 記述式問題や英語民間試験の活用は曲折を経て見送りとなったが、複数の資料を読ませたうえで解答させるなど、設問には変化が見られた。受験生が対応できるか不安もあったなか、大半が参加した1月中旬の第1日程の平均点は、全体としてはほぼ前年並みに落ち着いた。

 分量は多くても内容自体はそう難しくなかった。コロナ禍で部活動や学校行事が例年のようにできなかった分、勉強に打ち込めた――など、理由はいろいろ言われている。その後の各大学への出願や合否判定も、ほぼ混乱なく進んでいる。

 もちろん問題がなかったわけではない。

 思考力を測るといいながら、情報処理力の高い受験生に有利な設問だったとの指摘が多く聞かれる。また科目間の平均点に大きな差が生じ、センター試験を含めて初めて、一度に二つの教科で得点調整が行われた。

 さらに1月下旬にあった第2日程では、2科目の平均点が第1日程のそれより20点以上低かった。受験生の層や数が異なるため単純に比較することはできないが、出願先を決める際に困惑した人もいただろう。

 いずれについてもしっかり検証し、改善する必要がある。

 例年は東京と関西の2カ所だけの追試験会場が、今年はコロナ対応で全都道府県に設けられた。体調が悪い人は無理をしないようにとの呼びかけもあり、第1日程で追試験に回ったのは1721人と、前年の6倍以上だった。移動による感染リスクや旅費などの心配をせずに判断できた意義は大きい。

 高校側は来年も同様の措置を希望している。教室を提供する大学などに支払う経費が増えるのは入試センターにとって頭が痛い話だが、それを理由に会場を絞るのはおかしい。

 感染症の流行だけでなく、荒天や災害など長距離の移動を困難にする事情は色々ある。必要であれば国が財政支援するなどして、受験生が地元で追試験を受けられるようにしてほしい。

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