(社説)九州の豪雨 国は支援を尽くせ

社説

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 熊本県を襲った豪雨災害は、時間の経過とともに死者が増え、氾濫(はんらん)した球磨川の流域などで捜索・救助活動が続いた。避難者らへの生活支援も急務になっている。

 一方、気象庁は福岡など九州北部各県に大雨特別警報を出し、命を守るための行動など最大限の警戒を呼びかけた。

 国は自治体と連携し、被災した熊本への支援をはじめ必要な対策を尽くさねばならない。

 熊本の被災地では、土砂崩れや浸水、橋の流失などで孤立している集落があり、一部地域では停電や断水が続いた。自衛隊や警察、消防、役場職員らが人海戦術で捜索と救出、安否や被害の確認を進めているものの、なお全容はつかめていない。

 大雨で地盤はゆるみ、河川の護岸が崩れたところもある。二次災害に見舞われないよう、注意しつつ活動してほしい。

 政府は非常災害対策本部を立ち上げた。物資の支援では、食料や水など生活必需品のほか、暑さや新型コロナウイルスを含む感染症への対策として、クーラーや体温計、避難所で仕切りに使うパーティション、簡易トイレなどを送る。

 各地に設けられた避難所に移る人は増えているが、指定避難所が浸水するなどで他の施設や親類・知人宅に身を寄せたり、自宅にとどまったりしている人も多いようだ。必要とする物資は多様だろう。当面は要請を待たずに届ける「プッシュ型支援」を軸に、現場からの声にも耳を傾けて対応してほしい。

 「人」の支援も欠かせない。

 熊本以外の自治体からは、警察や消防の応援部隊に加え、一般の職員も駆けつけ始めた。近隣の各県に大雨特別警報が出されたことを踏まえ、九州より広域での支援態勢の検討も必要になる。

 政府も国の職員を派遣し、必要に応じて増やす方針だ。熊本の被災地には、過疎化で役場職員が手薄な自治体が少なくない。実情をよく知る熊本県と協議し、役割分担を明確にすることが欠かせない。

 一方、NPOや個人のボランティアによる現地支援については、新型コロナ問題や悪天候が続く見通しなどを踏まえ、状況を見極めるべきだろう。

 福岡など大雨特別警報が出された地域では、外出に危険が伴う場合は自宅2階に待避するなど、柔軟な判断と行動が肝要だ。特別警報には至らない地域でも、避難指示・勧告が出されれば、避難所への移動をはじめ早めの行動が求められる。

 激しい雨は、九州だけでなく日本列島の広域にわたっている。惨事を防ぐための備えと行動を徹底したい。

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