工作講師 千村裕子(東京都 81)
道端に白い十字を向けて、どくだみの花が満開である。
幼稚園のころは、まだ戦争の真っ最中であった。まだ夜が明けぬある日のこと、風呂敷に着物を何着か包んで背負った母と家を出た。郊外の知り合いの農家に、食べ物を分けてもらうためだ。母の大切な着物はわずかばかりのサツ…
工作講師 千村裕子(東京都 81)
道端に白い十字を向けて、どくだみの花が満開である。
幼稚園のころは、まだ戦争の真っ最中であった。まだ夜が明けぬある日のこと、風呂敷に着物を何着か包んで背負った母と家を出た。郊外の知り合いの農家に、食べ物を分けてもらうためだ。母の大切な着物はわずかばかりのサツ…