(ひととき)母に持たされた喪服

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 93歳の母は、緑内障加齢黄斑変性を患い、目はほとんど見えなくなった。それでも気丈に一人暮らしを続けている。私は足しげく母のもとに通っているが、その日は部屋の隅に古びた箱があった。「お前のだから持って行って」と母。前日に実家を訪れた弟が、押し入れで見つけたらしい。

 箱の中身は喪服だった。帯に帯締…

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