(社説)自粛解除基準 出口への道示す大切さ

社説

 大型連休が明けた。緊急事態宣言が延長されるなか、地域の感染状況を踏まえて外出自粛や休業要請の解除に動きだした県がある一方、13の特定警戒都道府県をはじめとして、先行きが依然見えず、引き続き苦難の日々を強いられる人は多い。

 そんな閉塞(へいそく)状態を何とかしようと、大阪府が独自の方針を打ち出した。▽経路不明の新規感染者数が10人未満▽PCR検査を受けた人の陽性率が7%未満▽重症者用ベッドの使用率が6割未満――の三つを7日連続で満たせば、自粛要請を段階的に解除するという。状況が悪化し再度の自粛要請に転じる場合の指標も、あわせて公表した。

 具体的な数値で示すのはわかりやすく府民の目標にもなる。「出口のないトンネルを走り続けろというのは無責任」という吉村洋文知事の発言に、共感する人は多いだろう。

 政府も、感染状況や医療の提供体制などを「総合的に判断して」といったこれまでの言い方にとどまらず、「見える化」に向けて検討を急ぐべきだ。

 もちろん全国一律の基準を設定するのは難しい。

 限られた病院でしか重症患者の治療ができない地域もあり、仮にそうしたところでひとたび院内感染が起きれば、病床は一気に逼迫(ひっぱく)する。高齢化の進み具合、近隣県との連携の可否など考慮しなければならない要素は多様で、結局はそれぞれの自治体が地域の実情に応じて主体的に決めるしかない。

 とはいえ、感染者の数や陽性率がどうなれば自粛要請を解除できる状況といえるのか、他に着目すべき指標にどんなものがあるかなどを丁寧に発信して、自治体の判断に資するおおまかな目安を伝えることはできるのではないか。新たな知見を得れば、すみやかに補足・修正するのは言うまでもない。

 一方、見逃されている感染者が多数いるのではないかとの懸念を払拭(ふっしょく)するためにも、PCR検査の拡充は急務の課題だ。

 政府の専門家会議は検査件数が増えない原因として、保健所などの業務過多、防護用具の不足、検体の輸送態勢の不備などを挙げる。いずれもかねて指摘されていた問題だ。外国と違ってSARS(重症急性呼吸器症候群)などが広がらなかったので「検査を担う体制拡充を求める声が起こらなかった」ともいうが、厚生行政の怠慢を正当化する理由にはならない。

 PCRだけでなく、開発が進む抗体検査や迅速診断キットも組み合わせて、感染の実態を正確につかむ。それが、宣言の解除後も見すえた施策を進めるうえでの大前提となることを、肝に銘じるべきだ…

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