(社説)関電の経営 「外の目」は十分か

社説

 金品受領問題が浮き彫りにした法令順守と企業統治の不全を、根本からただせるか。経営体制と取締役人事の案を決めた関西電力、そしてその株主の姿勢と意識が問われる。

 福井県高浜町の元助役(故人)から幹部らが多額の金品を受け取っていた関西電力が、経営の監督と業務執行を分離する指名委員会等設置会社へ移行し、社外取締役を中心にかじ取りしていくと発表した。6月末の株主総会に諮る。

 13人の取締役のうち社外を8人と現状の倍に増やす。役員の指名と報酬、そして監査の3委員会を設け、各委員長に社外取締役が就任する。取締役会の議長も、社外から会長に就く前経団連会長の榊原定征氏が務める。これが案の概要である。

 儀礼の範囲をはるかに超える金品を多くの役員や社員が受け取りながら、不十分な社内調査と内々の処分で済ませていた。そうした経営首脳の判断を問題視すべき監査役も動かなかった。信じがたい対応の連鎖を繰り返さぬよう、「社外の目」を重視することは出発点になる。

 しかし、仕組みを整えても機能するとは限らない。新体制にも懸念が残る。

 たとえば監査である。

 今回の取締役候補のうち、社外の2人と関電出身者1人の3人は現在の監査役から転じ、新体制でも監査委員会などに加わる。3人の監査役就任は昨年夏で、監査役会が18年秋に金品受領問題を知りながら取締役会に報告しなかった判断にはかかわっていない。しかし昨年秋の不祥事発覚以来、自らの機能不全についてしっかり説明していない監査役会の一員として、一連の問題をどう考えているのか。

 3委員会を含め取締役会の司令塔となる榊原氏が非常勤なのも解せない。社外の調査委員会が3月に公表した報告書が、関電の内向き体質刷新の困難さを強調し、会長に「内部に自ら深く手を入れ、時間と労力を割ける者」を求めたのとは、開きがある。

 関電の筆頭株主である大阪市の松井一郎市長は、元大阪市長の橋下徹氏を社外取締役に推した。関電は特定の株主との関係が深いことを理由に拒んだが、関電が公表した人事案を市はどう受け止めたのか。大阪市は今年も株主総会に情報の徹底開示や脱原発に関する議案を提案するが、社外取締役についても意見を示すべき立場にある。

 関電は他の電力大手と同様、地域で大きな存在感を持つだけに、社外の声に一層謙虚に耳を傾ける必要がある。関電が基盤とする地域の自治体であり株主でもある大阪市や神戸、京都両市も、重い責任を負っている…

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