(社説)災害予測図 改善重ね活用広げよ

社説

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 東日本を中心に死者・行方不明者が約100人に及んだ台風19号の上陸から半年がたった。

 今月13日には発達した低気圧の影響で広い範囲で激しい風雨となり、千葉県では避難勧告も出た。新型コロナウイルス対策に追われるなかでも、災害への備えは怠れない。

 19号の被害状況から浮かんだ課題の一つが、ハザードマップ(災害予測図)をより充実させる必要性だ。

 マップは住民の防災行動の基本となる。だが、雨の降り方の激甚化により、カバーできていない地域で想定外の被害がおきるケースが相次いでいる。

 たとえば中小河川。国土交通省によると、19号では71の河川で堤防が決壊したが、6割にあたる43は比較的規模が小さい河川だった。これらは水位を見るカメラなど監視態勢も不十分で、自治体が決壊や氾濫(はんらん)を即座に把握できない例も多かった。

 ハザードマップは、県などが作る「想定し得る最大規模の降雨」での浸水想定区域図をもとに、市町村が避難場所や避難経路などの情報を加え、住民向けにつくる。しかし中小河川の場合、浸水想定区域図が未作成で、マップ上で空白になっている地域が少なくない。

 台風被害を受け、国交省は中小河川における水害リスクの技術検討会を設置し、6月までに都道府県むけに浸水想定区域指定の手引を作る。自治体は早めに作成に着手し、適切な避難行動に結びつけてほしい。

 マップについては改善すべき点がもう一つある。降った雨を排水しきれない時などにおこる内水氾濫の危険地域の表示だ。

 国交省によると、19号では15都県144市区町村で発生し、1万戸超の家屋が浸水した。長時間の雨で川の水位が上昇し、下水道から排水できなくなったり、流木で配管が詰まったりして市街地が冠水した。川崎市タワーマンションでは地下の電気系統がつかって停電した。

 地理的な条件がそろえば、どこでも起こる。専門家はそう警鐘を鳴らす。過去に大きな被害を受けた自治体では、川の氾濫などを想定した洪水ハザードマップとは別に内水ハザードマップを作って公表している。だが、一部にとどまる。これまで被害がなかった市区町村も危険な場所がないか調べ、必要に応じて整えておくべきだ。

 マップの作成にはその地域の地形の特徴や地盤、災害歴などの調査が必要となる。簡易な調査でとりあえず作り、早期に警戒を呼びかける手もある。

 被害を最小限に防ぐため、ふだんからできる限りの準備をしておく。そのためには自治体と国の連携が欠かせない。

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