上池袋に出現した木造賃貸アパートネットワーク 令和の「トキワ荘」

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編集委員・大鹿靖明

 東京・上池袋の山田絵美さん(43)は、自宅に隣接するアパート山田荘の活用を考えあぐねていた。いまどき、風呂なし、トイレは共同である。すると夫の山本直さん(38)と近所のくすのき荘に「For Rent」の札を見つけた。そこにはシャワーがある。足りなければ街にあるものを使えばいいんじゃない? やがて芸術家らが集い、「かみいけ木賃(もくちん)文化ネットワーク」と名乗る。令和の「トキワ荘」はこうして始まった。

 山田家は自宅の隣に木造賃貸アパート山田荘を建て、その収益で自宅の建築資金をまかなった。主に学生下宿で全6室。「庭先の木賃」と呼ばれ、高度成長期以降、続々誕生した民間アパートのひとつだった。まだ近所に銭湯がいくつもあった時代である。

 一人娘の山田さんはいずれ相続することになる。「でも普通に貸すだけでは面白くない」と思っていた2014年、新進美術家に「泊まれるアトリエ」として貸して気がついた。「山田荘全体がこんなコミュニティーになったら面白い」と。

 山田さんは街づくりや景観保…

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この記事を書いた人
大鹿靖明
編集委員
専門・関心分野
経済、歴史、人間、ジャーナリズム、ロック