第1回ワンマン経営の朝日出版社 「創業者の死」で降りかかったM&A問題
藤田知也
東京・御茶ノ水駅からほど近い大学病院で2023年4月24日未明、ひっそりと息を引き取った男性がいた。朝日出版社の創業者、87歳の原雅久である。
原のおいで朝日出版社の2代目社長、小川洋一郎(53)は早朝に連絡を受け、信じられずにいた。週末を挟んだ3日前に入院中の原と電話で会議室をつなぎ、代わる代わる受話器を握る各部署の担当者が「あの仕事はどうした?」「頼むよ」と発破をかけられたばかりだった。
みのもんたも駆けつけたお別れの会
小川は原に付き添った担当役員(当時)と合流し、原の妻と娘が暮らす居宅へ向かった。訃報(ふほう)を届けるためだ。
伯母といとこにあたる2人が暮らす築50年の戸建ては、朝日出版社の保有不動産でもあった。ただ、小川は2人に会ったことがなかった。原は長く他の女性と暮らしていて、私生活を語ることもほとんどなかったからだ。
複雑な思いを抱きながら、おそるおそる呼び鈴を鳴らした。
小川によると、初対面の伯母…
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