芥川賞作家・九段理江さん「95%がAI」の小説 「広告」誌で発表

有料記事

野波健祐

 作家の九段理江さんが「95%をAIで書いた」という小説「影の雨」を3月下旬発売の雑誌「広告」で発表した。昨年の芥川賞受賞作「東京都同情塔」について「全体の5%ぐらいは生成AIの文章を使っている」と語っていたことから、編集部が逆の発想に基づき「95%を生成AI、残り5%を九段さん」とのルールで執筆を依頼した。

 「影の雨」は4千字ほどの掌編。AIの「私」が人間の感情とは何かについて思いをはせる内容だ。最初と最後の一文を九段さんが書いて方向性を定め、残りは対話型AI「ChatGPT(チャットGPT)」にゆだねた。九段さんは小説の書き方を指導するかのように対話を重ね、両者のやりとりを記録した「プロンプト」は約20万字に。雑誌にはその一部も掲載しており、後日全文公開を予定している。

 「広告」誌は1948年に博報堂が創刊。今号から「さあ、うれしい事件を。」をテーマにリニューアルした。新編集長の山口綱士さんは「雑誌自体が事件を起こす発信源になっていきたいとの思いから、自分の手で書ける九段さんが、AIを使って書くというある種のタブー的な実験としてお願いしました」と話す。

 プロンプトには、AIの能力…

この記事は有料記事です。残り151文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【春トク】締め切り迫る!記事が読み放題!スタンダードコース2カ月間月額100円!詳しくはこちら

  • commentatorHeader
    田中知之
    (音楽プロデューサー・選曲家)
    2025年3月29日8時35分 投稿
    【視点】

    文学ではなく音楽とAIの話で恐縮ですが、私は"東京芸術中学"という中学生の為のアートスクールの講師をやっているのですが、先日、私が受け持つ授業で、生徒さん達にAI音楽生成アプリSUNOを使って、各自が作りたい音楽をプロンプトの方法を工夫しな

    …続きを読む
  • commentatorHeader
    鳥海不二夫
    (東京大学大学院教授=計算社会科学)
    2025年3月30日9時48分 投稿
    【解説】

    「95%をAIが書いた」というと,ほぼ自動化のように思ってしまいそうですが,記事の内容を見る限り,作者が納得するまでAIの出力を更新し続けているように思います.AIが出力したものの最終的な良し悪しを人間が判断する,というのはChatGPTな

    …続きを読む