「笑顔を返して」 サリドマイド薬害、被害者の60年 苦しみ今も

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藤谷和広
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 サリドマイド薬害で被害を受けた人の平均年齢が60歳を超えた。睡眠薬や胃腸薬として販売され、妊婦がのむと障害のある子どもが生まれる事例が相次いで報告されたが、日本では回収が遅れた。被害者の苦しみは今も続いている。

 「私の笑顔を返して」

 河口智彦(としひこ)さん(62)の切実な願いだ。サリドマイドの影響で、生まれつき、顔の神経にまひがある。表情をつくることが難しく、笑顔の写真は1枚もない。

 日常生活にも支障がある。口を閉じられないため、食事のときはこぼれないようにお皿やおわんを近づける。つばが出ると、涙も出る。まばたきができず、寝るときもうっすら目を開けたままだ。鼻も曲がっていて狭く、口呼吸しかできない。

 河口さんには、耳もない。6…

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この記事を書いた人
藤谷和広
くらし科学医療部|医療、災害
専門・関心分野
民主主義
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    福原麻希
    (医療ジャーナリスト・介護福祉士)
    2025年3月31日17時33分 投稿
    【解説】

    サリドマイド薬害の被害者が加齢によって、新たな健康被害に直面している問題は10年前から言われてきた。同時期、そして、先月もその実態がNHK番組で報道された。生まれたときから偏見にさらされ、社会的な差別によって生きることを躊躇するほど苦しんで

    …続きを読む