「誘拐されました」 ミャンマーに進出した手袋メーカーが迎えた危機
国内の手袋メーカーの大多数が集まる香川県東かがわ市に拠点を置く「クロダ」は、1970年代から賃金が安いアジアで手袋を生産してきた。ファッション革手袋の分野では国内シェアの約30%を占める。
「グローバル化の先駆者」を自負するそんな中小企業にとって創業来のピンチが最近あった。
クロダの本社は高松と徳島を結ぶJR高徳線の中間、三本松駅の裏手。74年、32歳だった北海道生まれの現会長の黒田俊英さん(83)が創業した。
日中国交正常化まもない78年に上海で手袋の委託加工貿易を始めたのをきっかけに、生産拠点の大半を中国に移した。中国の人件費が上がった2000年代にはインドやミャンマーにも進出。25人いる日本人従業員は本社機能を主に担っている。
危機の発端は23年11月28日夜。
本社の隣にある黒田さんの自宅に、ミャンマー人の工場長から「誘拐されました」と国際電話が入った。
クロダは18年2月、ミャンマー中部のマグウェー管区にニット手袋などを製造する工場を開いた。世界3大仏教遺跡とされる世界遺産のバガンに近い町だ。
3年後、ミャンマーでクーデターが起き、全権を握った国軍の統治となったが、現地の従業員約120人は変わらず生産に従事していた。コロナ禍の影響もあり日本人従業員は引き揚げ、日本語が堪能な工場長がトップを務めていた。
外務省に頼ろうとしたが
工場長はこう伝えてきた。「…
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