第2回「手錠姿さらしません」32年前に実現 でも今は…裁判官が語る本音
「手錠姿さらしません 人権配慮し特例」
1992年9月25日、朝日新聞朝刊(大阪本社版)の社会面トップにこんな見出しの記事が載った。
恐喝罪に問われ、無罪を主張した被告が、京都地裁に対し、法廷に入る前に手錠・腰縄を外すよう求めた。白井万久(かずひさ)裁判官は訴えを認め、被告が入退廷する際、傍聴人をいったん退廷させる異例の措置をとった。司法史で初のケースとされた。
手書きで11ページの被告の申立書には、こうあった。
「手錠と腰縄をうたれて公衆の面前に引っ張りだされる被告はこの時点でいっさいの人間として(の)尊厳と価値を剝奪(はくだつ)されている」
それから10カ月後、最高裁は全国の裁判所に「傍聴人のいない所で解錠し、施錠させる運用を原則とすることが相当」という通知を出した。
罪に問われた人は、手錠・腰縄姿をさらされても仕方がないのでしょうか。「たとえ一瞬でも、いやでした」。その訴えを出発点に、取材を進めました。
白井裁判官の対応を事実上、肯定するものだった。通知では、新たに裁判官、被告、傍聴人の順番で入廷する方法も提案した。
ただ、この原則は定着しなかった。
手錠・腰縄問題に取り組む太田健義弁護士(大阪弁護士会)は、反省を口にする。「弁護士も手錠・腰縄姿を見慣れてしまい、問題としてこなかった」
被告の気持ちは「法的な保護に値する」 民事裁判で言及
再び光が当たったのは2014年のことだ。
ある事件の被告が「手錠・腰…
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