遠藤隆史

東京社会部 | 最高裁担当
専門・関心分野司法、労働、福祉

現在の仕事・担当

東京の司法クラブで、主に最高裁の取材を担当しています。最高裁の判決などの読み解きのほか、司法ニュース全般についても取材します。
司法の記事は小難しくなりがちですが、裁判所を飛び出して現場も取材しながら、その司法判断が社会にどう影響するのかをわかりやすく伝えられるよう心がけています。

バックグラウンド

徳島で生まれて、小学校から大学まで東京で過ごしました。前橋総局、山形総局で記者をした後、大阪で編集者として紙面レイアウトの経験を積んで、現場の記者に戻ってからは大阪→東京と社会部で働いています。

大阪で裁判担当をしていた頃、労働問題にまつわる訴訟を多く取材しました。働き方をめぐるトラブルは、誰もが当事者になり得ます。ずっと書き続けたいなと思って、いまも時間をつくって取材しています。最近は「偽装フリーランス」のテーマを追いかけていて、手がけた連載などに対して2023年の「貧困ジャーナリズム賞」を頂きました。
連載はこちら→ https://www.asahi.com/rensai/list.html?id=1740

仕事で大切にしていること

入社前から関心があった取材領域は福祉。きちんと知識を身につけた上で取材をしたいと考えて、社会福祉士の資格を取りました。資格を取る過程で経験した、知的障害者施設での1カ月間の実習で、「懸命に生きる人が報われるような記事を書きたい」という思いが固まったような気がします。

「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく」が理想ですが、どう書くべきか、いつも試行錯誤しています。

タイムライン

記事を書きました

国民審査、「どうせムダ」と諦めないで 最高裁にも届く「国民の声」

 15人の最高裁裁判官のうち6人に対する国民審査がきょう27日、衆院総選挙の投票と同時に行われる。「やめさせたい」との投票が過半数になれば裁判官は罷免(ひめん)(解職)される。解職になったケースはないが、元最高裁裁判官は「結果には国民の意思が確実に反映される」と語る。その理由は。  弁護士の菅野(かんの)博之さん(72)は、裁判官として東京や北海道で勤務し、2016~22年に最高裁で裁判官を務めた。国民審査は17年に受けた。  「審査を受ける際は非常に緊張感があった。同時に、裁判官として国民とのつながりを直接持てる経験でもあり誇らしい気持ちも強かった」と振り返る。各世帯に配布される審査公報では、裁判官の心構えをしっかりと書いて判断材料にしてもらおうと考えたという。  審査は、有権者がやめさせたい裁判官に「×」をつけ、「○」などを書くと投票は無効になる。  菅野さんは、×が440万7669票で、有効票に占める×の割合(罷免率)は8・04%だった。過半数には及ばないものの、罷免率のデータから、ある特徴に気づいたという。 ■×が多かった県、その理由は  都道府県別では多くが5~8%だった罷免率が、沖縄県では際立って高い16・97%を記録した。2番目の京都府の11・52%より5ポイント以上も高かった。  なぜ沖縄なのか。菅野さんは、思い当たる理由があった。  審査を受ける前年の16年12月。菅野さんがいた最高裁第二小法廷は、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画をめぐり県知事が国を訴えた訴訟で、県側の敗訴を確定させる判決を言い渡した。関わった裁判官は4人いたが、17年に審査されたのは、菅野さんだけだった。  「判決に対する県民の批判が結果に表れた、と受け止めた。その意味で、国民審査はしっかり機能していると言えるのです」 ■「自分なりの判断を」  裁判官の判断が、審査結果に影響したとみられるケースは他にもある。  前回21年の国民審査では、対象となった11人の裁判官のうち、夫婦別姓を認めない民法を「合憲」と判断した4人だけは、罷免率が全国で7%を超えた。他の7人は5~6%台だった。特に東京都での罷免率は、4人とも10%超。選択的夫婦別姓の導入を求める市民団体がSNSで罷免を呼びかけたことなどが影響したとみられる。  菅野さんは「国民の皆さんに、非常に真面目に審査をしていただいたと思う。結果の数字には国民の意思が表れるし、裁判官にも届いている。『どうせ罷免にならない』と思わず、自分なりの判断で投票してほしい」と話している。

2日前
国民審査、「どうせムダ」と諦めないで 最高裁にも届く「国民の声」

記事を書きました

アイドル脱退の違約金、「労基法違反で無効」 事務所側の敗訴確定

 アイドルグループを脱退した男性に対し、所属事務所が約1千万円の違約金を求めた訴訟の上告審で、最高裁第一小法廷(安浪亮介裁判長)は事務所側の上告を退けた。17日付の決定。アイドル活動の実態から、男性を労働基準法で保護される「労働者」と認めて事務所の請求を退けた一、二審判決が確定した。  男性は2019年1月に大阪市の事務所と「専属マネジメント契約」を締結。契約書には「事務所の承諾なしに脱退できない」とする規定のほか、「違反1回で200万円」との違約金条項があった。男性が20年8月に契約解除を求めると、事務所側から違約金を求める訴訟を起こされた。  一審・大阪地裁は、男性にライブやレッスンを断る自由はなく、仕事場所や時間を拘束されていたと指摘。男性は独立した事業者ではなく、事務所の指揮監督を受ける「労働者」と認めた。  違約金条項は「労働契約の不履行について、違約金を定める契約をしてはいけない」とする労基法に違反し、無効だと判断し、事務所側に男性への未払い賃金11万円を支払うよう命じた。二審・大阪高裁もこの結論を支持した。  第一小法廷は決定で、上告ができる理由にあたる憲法違反などがないとだけ判断した。  実態は労働者性が高い働き方をしているのに、形式的にフリーランス(個人事業主)として扱われ、労基法などの保護から漏れた働き手は、「偽装フリーランス」と呼ばれて問題となっている。

7日前
アイドル脱退の違約金、「労基法違反で無効」 事務所側の敗訴確定

記事を書きました

「検察なめんな」特捜部の取り調べ録画18時間分、最高裁が提出命令

 大阪地検特捜部に業務上横領罪で逮捕・起訴され、2021年に無罪が確定した不動産会社の元社長が国に7億7千万円の賠償を求めた訴訟をめぐり、最高裁第二小法廷(草野耕一裁判長)は、特捜部検事による約18時間分の取り調べ映像を証拠として提出するよう国に命じる決定を出した。提出させる範囲を約50分とした大阪高裁決定を破棄した。  16日付で、裁判官4人全員一致の結論。取り調べの録音・録画の提出を最高裁が国に命じたのは初めて。  検察の取り調べをめぐっては近年、対象者への暴言などの違法性を訴える訴訟が相次ぐ。決定は、密室で行われる取り調べの映像が民事裁判で検証される可能性を改めて示したもので、検察当局への警鐘になる。 ■「検事の威圧でうその供述」  大阪市の不動産会社「プレサンスコーポレーション」元社長の山岸忍さん(61)は、学校法人からの土地売却に絡み21億円を横領した事件の共犯とされ、21年に無罪になった。  国を訴えた大阪地裁の訴訟で、田渕大輔検事(52)=現東京高検=が元部下への取り調べで「検察なめんな」などと威圧し「(山岸さんは)共犯だ」とうその供述をさせたと主張。違法な取り調べを証明するため、映像の提出を地裁に求めていた。  刑事訴訟法には「目的外使用の禁止」規定があり、検察が開示した証拠は刑事裁判以外の場で使えない。そのため、今回の映像を例外的に民事裁判の証拠にできるかが争われていた。  地裁は23年、山岸さんの刑事裁判の証拠として法廷で上映された約50分の元部下の取り調べ映像に加え、上映されなかった約17時間分の提出も国に命じた。しかし大阪高裁は今年1月、取り調べのやりとりの書き起こしが提出されたことなどから、提出の範囲を約50分だけに狭めていた。 ■取り調べ映像「調べる必要性高い」  第二小法廷は決定で、提出するかは国に裁量があるとする一方、この訴訟では取り調べでの検事の言動が「深刻に争われている」と指摘し、審理を担う地裁が提出を必要だと判断したことに「相応の配慮を払うべきだ」と述べた。映像には検事の態度など非言語的な要素が記録され、書き起こしよりも「格段に多くの情報を含んでいる」として、刑事裁判で上映されなかった分も調べる必要性が高い、と判断した。  そのうえで、映像が提出されても捜査への悪影響や、元部下へのプライバシー侵害は生じないと指摘。「提出を拒む国の対応は裁量権を逸脱している」と結論づけ、高裁の決定を破棄し、地裁の決定を確定させた。  弁護士出身の草野裁判長と、検察官出身の三浦守裁判官は補足意見で、提出された映像をネットで公開することなどにより元部下のプライバシーが侵害されないよう「代理人弁護士の配慮を期待する」などと付言した。  大阪高裁は今年8月、山岸さんの元部下を聴取した田渕検事について、特別公務員暴行陵虐罪で刑事裁判を今後開くことを決めた。田渕検事が取り調べで得た供述は、山岸さんの起訴の根拠となったとされる。  取り調べを「可視化」する録音・録画は、自白強要が冤罪(えんざい)を生んだ足利事件や大阪地検特捜部の証拠改ざん事件を受け、刑事訴訟法が改正され19年に制度化された。裁判員裁判の対象事件や検察の独自捜査事件で、逮捕後の全過程が録音・録画されている。

「検察なめんな」特捜部の取り調べ録画18時間分、最高裁が提出命令
有料会員登録でもっと便利に  記者をフォローしてニュースを身近に