かこさとしさんの「絵でみる化学のせかい」復刊 40年以上前の絵本
【神奈川】「だるまちゃん」シリーズなどで知られ、2018年の没後も多くの子どもたちに絵本が読み継がれるかこさとしさん。実はもともと工学博士で「かわ」や「はははのはなし」など、理系の知識を生かした名作も多い。40年以上前に手がけた「絵でみる化学のせかい」が11月、データを最新化して復刊された。
長女の鈴木万里さん(67)は、かこさんが亡くなるまで半世紀を過ごした藤沢市の図書館に20冊を寄贈。「料理など身近な親しみやすいことから興味を深めていける。かこらしい遊び心も満載で、ぜひご家族でながめていただけたら」と話した。
かこさんは東大工学部を卒業後、47歳で専業作家になるまで、昭和電工で石油化学を研究していた。「絵でみる化学のせかい」の初版は1981年から刊行された6巻シリーズで、日本化学会が監修した。
万里さんによると、かこさんは大好きな化学の楽しみを、これまた大好きな絵本を通して伝えられると張り切っていたという。
かこさんらしい、かみ砕いた説明や楽しい仕掛けが満載で、例えば1巻「原子と分子のたのしい実験」では、コップについだ水を次々に半分にしていき、分子や原子を理解していく。2巻の「なかよし いじわる 元素の学校と周期表」では、丸暗記のイメージが強い周期表の元素一つ一つに、似顔絵が添えられている。
「今回、改めて専門家の方々に見ていただいたのですが、それぞれの性質をこの『顔』がよく表しているそうなんです」と万里さんは話す。
シリーズは当時のかこさんが全力を注いだ作品だが、時を経て各分野で新しい知見が出てくるのは必然。最新のデータに更新して改訂したいというのが、晩年のかこさんの願いだった。
今回、遺志を引き継いだ万里さんが復刊を模索していたところ、講談社が応じ、「新・絵でみる化学のせかい」(5巻)として実現した。
監修は光触媒反応の発見者として知られ、ノーベル賞候補にも名前が挙がる藤嶋昭・東京理科大栄誉教授。生前のかこさんと親交があり、白羽の矢が立った。
藤嶋さんは「40年以上前の本のため、相当な修正を覚悟したが、実際には大きな修正は必要なかった」と感心していたという。近年の発見や学説を注釈で入れたり、解説を付けたりして、かこイズムを損なうことなく、現代にも通じる内容にした。
「カラスのパンやさん」などでおなじみの、ページいっぱいに物の絵が並ぶ「ものづくし」も随所に登場。セザンヌやゴッホなど世界の名画を次々と背景に描き込んでいく巻もある。
万里さんは「教科書などと違って、好きなところから好きなだけ読めばいいのが絵本。それぞれの発見を楽しんでほしい」と語った…
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