南海トラフ臨時情報は必要か 地殻変動学者が指摘する最大の問題点は
聞き手 論説委員・黒沢大陸
「巨大地震注意」を呼びかける南海トラフ地震臨時情報が8月に初めて出された。備えが進んだとの評価もある中、地殻変動学者の鷺谷威さんは「この情報体系は作るべきではなかった」と、臨時情報そのものに否定的な見方を示す。何に警鐘を鳴らしているのか。
――臨時情報をどう受け止めましたか。
「今回の臨時情報は、南海トラフ地震の想定が、東日本大震災後にマグニチュード(M)9に見直されたことと関わりがあります。この時に想定震源域が広げられ、その端の日向灘で起きた地震で臨時情報が出ました。M9の想定は地震学の常識から外れており、大きすぎます。学術的な議論が不十分な前提から出た情報で、危うさがあります」
――特別な対応は必要なかったのでしょうか。
「100回のうち99回は地震が起きないという情報ですし、仮説の上に仮説が重なっていてバランスが悪く、過剰な反応にもつながっていると思います。日向灘の地震活動には、四国沖以東の南海トラフとは違った特徴があり、そこの地震で東海エリアまで警戒するのは違和感があります」
――臨時情報で危機感が高まった効果もあります。
「こういう形で情報が出され…