社員60人超は全員地域おこし協力隊員 2400人の村、異例の戦略

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岩田正洋
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 「地域おこし協力隊」の若者が60人以上いる、人口2400人ほどの小さな村がある。協力隊の運営を担う第三セクターは、まもなく設立3年目を終える。全国から注目される一方、課題も多い。

 秋田県東南端の東成瀬村は、東は岩手県、南は宮城県と接する。奥羽山脈のふもとに位置。積雪は多いときで3~4メートルに達し、特別豪雪地帯の指定を受ける。人口は1947年の約6千人をピークに、いまは2400人を割った。

 「コンビニとカフェが1軒ずつしかない、課題の多い村です」。村役場庁舎で9月2日にあった地域おこし協力隊の辞令交付式で、備前博和村長はそう話した。

 辞令を受け取った、札幌市と秋田県湯沢市から来た20代の女性2人は交付式の前後、同じ場所で開かれた「東成瀬テックソリューションズ」(なるテック)の全体会議に出席した。なるテックは村などが出資する第三セクター。社長の近藤純光氏(35)を含む60人以上の社員全員が地域おこし協力隊員だ。村内にいる協力隊員の8~9割を占める。

 全体会議では、東京のコンサルティング会社などがオブザーバーとして参加するなか、8月にあった「成瀬ダムまつり」を担当した女性が「(来場者が)2千人を突破しました。今回の祭りを通して、地域おこし協力隊はこういう活動にも取り組んでいるんだと分かってもらえた。なるテックが広報を担当すると、これだけの人を呼び込むことができると証明することができました」などと報告した。

なるテックの狙いとは?

 なるテックの設立は2021年10月5日。資本金は500万円で、コンサルティング経験のある近藤氏と村が出資する。

 村は協力隊の運営業務を、なるテックに委託。その背景を近藤氏は次のように説明する。

 「地域おこし協力隊はとても…

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    筒井一伸
    (鳥取大学地域学部地域創造コース教授)
    2024年9月23日10時0分 投稿
    【視点】

    「地域おこし協力隊」は誕生から15年を経過して,その呼称もすっかり定着した感がある。しかし残念ながら誤解はまだまだ多い。地域おこし協力隊は【隊員=個々人】を指し示すものではなく,総務省から自治体に対して特別交付税が措置されるという【制度】を

    …続きを読む