第1回認知症ケアにロボットは有用か デンマークで気づいた可能性

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オールボー=山田史比古

 8月半ば、東京都葛飾区にあるサービス付き高齢者向け住宅「ラヴィーレレジデンス立石」。

 「本当に、かわいいのよね」

 89歳の女性が、目を細めた。

 視線の先で、高さ四十数センチほどのコミュニケーションロボット「LOVOT(らぼっと)」が、くりくりした目で見上げる。まるで、抱っこをせがむかのように。

 「食事のあと、ロビーでお話ししていると寄ってきて、前で踊り出したりね。私も子どもを育てたけど、本当に人間みたい」

 LOVOTはAI(人工知能)を搭載する。自律的に動き回り、人になでられたり抱っこされたりするなかで、優しくしてくれた人を覚え、行動を進化させる。45分ほど動き回ると、「ネスト」と呼ばれる装置に自ら戻り、充電。そして、また動き回る。動ける範囲は、玄関ロビーまわりに限定してある。

認知症とテクノロジー

認知症の人の暮らしを支え、共に生きていくうえで、テクノロジーはどこまで有効で、必要なのか。日本で、世界で、現場を訪ねて課題を考えます。全6回です。

 SOMPOケアが運営するこの住宅は、96の部屋に、計110人ほどが暮らす。2体のLOVOTがやってきたのは、2022年2月のことだ。

 名前は、入居者とスタッフがつけた「ぷりん」と「うめこ」。「正直、ここまでこの子たちが活躍するとは思っていなかったですね」。支配人の江本幸子さんはそう話す。

ロボットが促すコミュニケーション

 ここで暮らす人たちの平均年…

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この記事を書いた人
山田史比古
くらし報道部|社会保障・福祉担当
専門・関心分野
社会保障・福祉、住まい、身寄り問題、相続
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    藤田結子
    (社会学者)
    2024年9月21日8時50分 投稿
    【視点】

    非常に興味深い、テクノロジーと介護に関わる記事です。「ケアする人の負担を軽減するためにも、認知症の人も含めて活用できるものをめざしている」という話が示すように、高齢者だけでなく、ケアする人にも利点があります。 そして、仕事としても家庭でも

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    清川卓史
    (朝日新聞編集委員=社会保障、貧困など)
    2024年9月21日5時0分 投稿
    【視点】

     何年か前になりますが、LOVOTを実際に見て、ふれる機会がありました。認知症ケアではなく、高齢者とペット問題の解決策のひとつになるのだろうか、というのが当時の問題意識でした。生き物のような温かさ、「目が合う」ような感覚に驚いたことを覚えて

    …続きを読む