富山の絶景、海山を走る観光列車「べるもんた」 「レアチケット」も

朝倉義統
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 立山連峰や日本海、そして田園地帯と山の緑。富山の美しい景色と、海の幸や地酒が味わえる列車がある。フランス語で「美しい山と海」を意味する、「ベル・モンターニュ・エ・メール」。愛称「べるもんた」だ。

 JR高岡駅から海岸沿いに伸びる氷見線、山の方へ向かう城端(じょうはな)線の二つのローカル線を主に、土日に4本ずつ走る。

 石川県の七尾線を走る「花嫁のれん」とともに、JR西日本金沢支社が管理する観光列車だ。ただ、「花嫁のれん」は、元日の能登半島地震の影響で運休している。

 車内で富山湾鮨(ずし)が食べられ、県が昨年からPRする「寿司といえば、富山」のキャッチコピーがそのまま体験できるそうなので、乗ってきた。

 車両は、気動車の「キハ40」の1両編成で座席数39席の全席指定。切符は1カ月前に発売されるが、すぐに売り切れる入手困難な列車だ。

 特に氷見、城端の両線を走り、田園と海の両方の景色が楽しめる日曜日に運行する2本は「レアチケット」だそうだ。

 8月の3連休中の11日はその2本は取れなかったが、氷見線だけを走る1本が取れた。

 車両の全体はダークグリーンで、メタリックゴールドのラインと屋根、窓の縁取りが何ともシックで大人の味わいを感じさせる。車両の前後と側面には立山連峰と日本海をあしらったメタリックゴールドのロゴマークが輝く。

 午後2時59分、氷見駅のホームに、新高岡発の「べるもんた」が入線してきた。満席の乗客が降り終えると、その折り返しに、私を含む乗客が乗り込む。ドアの前では、車掌の小坂英嗣さんが出迎え、子どもには「べるもんた」や北陸新幹線などが描かれた特別なシールを渡していた。ちょっとうらやましい。

 東京から来た本郷研吉さん(52)と中国出身の妻・石暁宇(せきぎょうう)さん(41)は初乗車。本郷さんは富山市出身だが、「べるもんた」の存在を知らず、石さんがSNSで見つけてチケットを入手したという。石さんは「この列車は中国でも人気」という。

 座席は富山湾側を向く1人席13席と、少し高くなったボックス席26席で、額縁風にデザインされたという最大幅2・52㍍の窓がある。そして、富山の伝統工芸品の「井波彫刻」8作品を展示。つり革も高岡銅器をイメージして銅箔(どうはく)の装飾が施されている。

 後方の運転席手前には、車内で職人がすしを握るスペースがある。職人は発車間際から準備に入り、出発すると予約した客の席に運ばれてくる。

 この日のネタは、地元で取れた「メダイ」「サワラ」「連子鯛(れんこだい)昆布〆」など5貫、富山の逸品(この日はシロエビ)、はとむぎ茶が付いて税込み2500円。どれも絶品だ。すし職人の長瀬大輝さん(26)は、「『もう一度乗りたい』と思ってもらえるよう握っています」と話す。

 雨晴駅を出ると、鮮やかな青色の富山湾と砂浜が見え、しばらくすると白い夏雲と青空の中、絵はがきのように海に浮かぶ女岩が見える。

 1分ほど停車した車内は「わぁー! きれい!」など感動の声やスマホのシャッター音が響く。残念ながら、この日は立山連峰は見えなかったが、ボランティアガイドが沿線の景色を詳しく説明してくれた。

 富山湾の景色が過ぎ、伏木駅に近づくと、そこは工場地帯。広大なプラントの敷地内に銀色のパイプがいくつも伸び、工業都市の一面が垣間見られる。同駅を出ると十数分で終着の高岡に着いた。

 たった33分の列車の旅だったが、充実感と満足感は120%。本郷さん、石さん夫妻も降車後、「とても楽しかった。富山に来たら絶対乗るべきです」と語った。車掌の小坂さんは、「氷見線を走る方は毎回、満席が多い。みなさんの思い出に残るように務めています」と話す。

 指定席券は530円。両線は、早ければ5年後に第三セクター「あいの風とやま鉄道」に移管される。白く雪が積もった立山連峰と富山湾の景色が見られるのは、冬から春にかけてなので、そのときにまた乗りたい。次は「レアチケット」で。

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