リニア神奈川県駅をコンサートホールに 開業大幅遅れで活用案が浮上

井石栄司

 建設中のリニア中央新幹線神奈川県駅(仮称)をコンサートホールに――。そんな活用案が浮上している。リニアの開業が遠のいたことを逆手に取った試みだ。

 今月11日、相模原市緑区のJR橋本駅そばの工事現場には、地下駅を造るために掘った土砂が積み上げられ、広場ができていた。

 現地を視察した黒岩祐治知事は「工事現場には芝居、ミュージカル、コンサートなど、色んな可能性が眠っている」と語った。

 実は、すでに実績もある。

 昨年10月、JR東海の提案で、地元高校の吹奏楽部などが演奏するコンサートが開かれ、約5時間のイベントに延べ1900人が訪れた。JR東海の音楽同好会も演奏し、同好会に所属する丹羽俊介社長もトランペットを吹いたという。

 これに目を付けたのが黒岩知事だ。老朽化した県民ホール(横浜市)が今年度末で休館する。休館が長引けばスタッフを引き留めることもままならない。

 一方、リニアの開業時期は予定していた2027年から大幅にずれ込む見通しで、神奈川県駅は工事が順調に進んでいた分、完成間近の状態で長期間放置されることになった。

 そこでコンサート会場などに使えれば、駅のPRになり、県民ホールのスタッフの仕事や技術力養成の場にもなる。

 6月3日、黒岩知事と会談した丹羽社長が工事の進捗状況や開業までの活用策などを話し合うなかで、この日の視察が決まったという。

 工事現場に掘られた穴は長さ約680メートル、幅は最大約50メートル、深さは約30メートル。幅の狭い部分には鋼材が組まれているが、幅の広い部分や完成したトンネル部分(幅約18メートル、高さ約16メートル、奥行き約65メートル)には椅子も並べられる。トンネル部分は音響もいいという。

 県は活用に前のめりで、JR東海の担当者は「工事現場を広く活用できているのも県立高校の移転などで県や相模原市に協力していただいたおかげ」とし、「地域の理解を得るためにも、工事に影響が出ない範囲で協力したい」と話す。

 今後、県と同社で穴の底まで安全に下りる方法や具体的な活用方法を協議していくという…

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この記事を書いた人
井石栄司
横浜総局|行政・経済・中華街
専門・関心分野
地方財政、情報公開