法隆寺金堂の大量の古材、国宝へ 60年超の調査完結、火災の教訓も

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筒井次郎
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 世界最古の木造建造物、奈良・法隆寺の金堂(飛鳥時代、国宝)の古材が、国宝に追加指定される見通しとなった。昭和の修理で再使用されなかった部材や戦後の火災で焼損した天井板など、その数3284点。指定の陰には、捨てずに保管した寺の特別な思いと、膨大な数を丹念に調べた研究者らの努力があった。

 金堂や五重塔が並ぶ寺の中心「西院伽藍(さいいんがらん)」。その近くの築地塀の奥に、寺の古材収納庫がある。高床式の鉄筋コンクリート造りで、1984年に完成した。

 中に入ると、4~5段の可動式の棚がずらりと並ぶ。大小さまざまな古材が置かれ、10メートルを超す大きな桁も焼け焦げた板材もある。

 「各古材には整理番号が振られ、どの棚にあるかはすぐに分かります」と奈良県文化財保存事務所の岩永雄一郎主査が教えてくれた。

 棚には、雲をかたどった部材もあった。屋根の下で軒を支えた飛鳥時代の当初材だ。風食や丸みのある表面に1300年の年月を感じた。

 金堂の修理は、戦前に始まった「法隆寺の昭和修理」(1934~55年)の終盤に実施された。だが、「仏教美術の至宝」とたたえられた壁画の模写作業中だった49年1月、火災が発生。壁画焼損という大惨事を乗り越え、同年4月~54年の修理で損傷したり老朽化したりした古材などが新しい木材に替えられた。

 古材は一般には捨てられることも多いが、寺は境内で保管した。「建物自体が信仰の対象で、取り外された部材も同様です」と寺の大野正法執事長は語る。「そして、焼損古材は『火災を忘れてはいけない』という教訓を伝えてくれます」

法隆寺金堂の修理で再使用されなかった古材は、大量にありました。記事の後半では、研究者らがどのように調査・整理していったかについて紹介します。

 古材の整理と調査は59年ご…

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法隆寺みらいプロジェクト

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