「離婚なぜ必要?」既婚のトランス女性、戸籍上の性別変更申し立て

茶井祐輝
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 出生時の性別は男性で、結婚後に女性として暮らすようになったトランスジェンダー(トランス女性)が16日、戸籍上の性別を女性に変更するよう京都家裁家事審判を申し立てた。性同一性障害特例法の規定では、性別を変えるには離婚する必要があり、幸福追求権を定めた憲法13条や「婚姻の自由」を定めた憲法24条などに違反する、と主張している。

 申立書などによると、このトランス女性は京都市に住む50代。2015年に女性と結婚後に性別移行し、円満な婚姻関係を継続させている。2人に離婚の意思はないという。

 トランス女性は申し立て後の会見で、「もうすぐ結婚して9年。築いた家族関係を法律が勝手に引き裂いていいのかと思う」と語った。パートナーの女性も、「性別は、私にとって年齢や性格のようにその人を構成する要素のひとつでしかない」と話した。

 申立書では、住民票など、戸籍上の性別が表示された書類を提出するたびに勘違いされ、説明する必要があるとして、望まないカミングアウトを強いられているとも訴えている。

 特例法は戸籍上の性別を変えるうえで五つの要件を定めており、現在結婚していないことを求める「非婚要件」もその一つ。

 非婚要件は、結婚後に性別変更すると、現行法で認められていない同性婚の状態が生じる、として設けられた。最高裁は20年3月、「結婚している人の性別変更を認めると、異性間のみの婚姻を認める現在の秩序に混乱を生じかねないという配慮に基づくもので、合理性がある」と判断した。

 しかし、その後、同性婚を認めないのは憲法違反だと訴えた訴訟で、各地の裁判所で「違憲」や「違憲状態」とする判決が相次ぐ。札幌高裁は今年3月、「憲法は同性婚も保障している」として、現状を違憲と判断した。

 さらに、五つの要件のうち、生殖機能の喪失を求める「生殖不能要件」について、最高裁は昨年10月、「違憲・無効」と判断。性器の見た目の変更を求める「外観要件」についても、広島高裁が今月、「手術が必須なら違憲の疑い」と判示した。

 代理人の水谷陽子弁護士は「2020年とは状況が違う。(同性婚ができないことが)各地で違憲と判断される中で、『同性カップルの婚姻制度からの排除』を維持するんですか、と問いたい」と話している。さらに「(特例法の)他の要件が崩れてきている中で、改めて非婚要件を問いたい」としている。

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