「鬼」を抱えた性暴力被害者、治療に負担大きく 日本の予算は9億円

有料記事子どもへの性暴力

編集委員・大久保真紀 塩入彩 狩野浩平

 性暴力の被害者には専門的な治療が必要になる。だが、大きな費用がかかり、負担に苦しむ人も少なくない。経済的な支援はどうなっているのか。

 トラウマに詳しい国立精神・神経医療研究センター(NCNP)の元認知行動療法センター長で、武蔵野大学客員教授の堀越勝さん(68)は、性暴力を受けて心的外傷後ストレス障害(PTSD)になった被害者の精神状態について、「『鬼は内、福は外』の状態になる」と説明する。

 ふつうの人は善いことをすれば善いことが、悪いことをすれば悪いことが起こるという、いわゆる「公正世界の信念」を信じている。だが、理不尽な性暴力を受けた当事者は、その概念を覆された状態になるという。

 自分を守るために、心の中に高い城壁を作り、だれも乗り越えられないようにしてしまう。孤立し、城壁の中に自己嫌悪、罪悪感、怒りや不安など、さまざまな「鬼」をため込む。周囲の人が外から手を差し伸べても、振り払ってしまう。

 そうした状態になった人には治療が必要だ。セラピストなどの専門家が城壁から被害者を外に連れ出す、あるいは鬼をひとつずつ城壁の外に出して、「世の中には安全な人もいる」と認識してもらう。

 性暴力の被害者が苦しむ治療費の問題について、3人の専門家に取材しました。トラウマ治療の実施は医療機関の負担も大きく、公的な補助やトラウマ治療ができる仕組みづくりが求められているといいます。

■診療報酬「低すぎる」…

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この記事を書いた人
大久保真紀
編集委員
専門・関心分野
子ども虐待、性暴力、戦争と平和など
塩入彩
首都圏ニュースセンター|教育、武蔵野地区担当
専門・関心分野
ジェンダー、教育、性暴力、性教育