推しへの感情は天にも昇る、生身の恋はわからねど 岡田育さんコラム

 恋愛というものがよくわからないまま大人になった。デートレイプに遭ったりストーカー被害を受けたり、よい思い出が極端に少ない。手痛い経験を重ねては「何が楽しいの?」と混乱が深まる。

 物語に描かれた他人の恋模様を眺めるのは嫌いではないが、恋愛結婚をゴールとして神聖視する思想とは相容(あいい)れない。ドーパミンの愛とオキシトシンの愛はまるで別物だろう。恋の駆け引きの末に築かれた家庭、その後の暮らしがどんなものか、想像も及ばない。

 男でも女でもそれ以外でも、ポーッと見惚(ほ)れて対象に漠たる好意を抱くことはある。でも、その全員とロマンスやセックスがしたいわけではない。好きになった人から告白されて断ったこともある。恋情を伴わない相棒と、世に言う「交際0日婚」をした今現在は、やっと色恋沙汰から解放されたと安堵(あんど)している。もし子供の頃からアセクシュアルやアロマンティックといった概念を知っていれば、また別の生き方を選択したかもしれない。

 人にそう話すと、「推しには…

この記事は有料記事です。残り761文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【秋トクキャンペーン】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら