リニア着工、水資源・環境保全前提 静岡県・鈴木新知事インタビュー
鈴木康友知事は3日、朝日新聞などのインタビューに応じた。未着工のリニア中央新幹線静岡工区をめぐりJR東海の丹羽俊介社長と5日に県庁で初会談し、着工の前提として大井川の水資源や南アルプスの自然環境の保全を求める考えを示した。リニア停車駅がない県内へのメリットとして東海道新幹線の停車本数増も検討するよう求める。
鈴木知事は「(丹羽社長に)水の確保と環境保全を踏まえたうえで工事について議論を進めたいと伝える」と述べた。岐阜県瑞浪市でリニア工事が原因とみられる水位低下が起きた問題を受け、「信頼が一番なので、説明をしっかりしていただきたい」と要請する。
一方、県内への恩恵について「どういうメリットを与えてくれるかも今後詰めていかなければいけない」と話した。東海道新幹線の停車本数増について「今後話し合いたいという投げかけはするかと思う」とした。富士山静岡空港近くに新駅をつくる構想は、将来議論するテーマだという。
鈴木知事は4日に東京で斉藤鉄夫国土交通相と会談し、7日にはリニア沿線10都府県でつくる「リニア中央新幹線建設促進期成同盟会」の総会に出席する。「重要な課題であり、まずキーマンと速やかに会うのは大事」と述べ、関係者と議論の下地づくりを迅速に進める。大井川流域の市町も含め、「関係者の皆さんと協議しながら、連携は必要」と語った。
トンネル工事の前提として「山梨工区」の山梨・静岡県境周辺の地質などを調べるボーリング調査について、県は調査を近く認める方針だ。鈴木知事はJR東海から岐阜の水位低下問題の説明を受けたうえで「(JR東海と)山梨県と三者合意になろうかと思う」と話した。
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県が浜松市で計画する新県営野球場については「浜松市の役割を含め、全体の整備について再度議論したほうがいい」と改めて主張した。
事業手法は「民間の活力を導入していく必要がある」と述べ、PFI(民間資金等活用事業)方式が有力とした。今後、野球場を含めた遠州灘海浜公園(篠原地区)全体の整備を県、市、民間が連携して進める方向で仕切り直す。県は収容2万2千人の「多目的ドーム」、2万2千人の「屋外」、1万3千人の「屋外」の3案を示し、6月県議会定例会で絞り込む予定だった。
県東部の市町長などから野球場計画に反発があることについて、「県営野球場は東部や中部にあるが、西部は野球場もプールも市営。県の投資が本当にない」との認識を示した。「(知事選で)政治的な問題になってしまって非常に残念。理解をいただく努力が必要」と語った。
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伊豆・東部地域では、スタートアップ(新興企業)をはじめ企業誘致に力を入れていく考えを改めて強調した。「すごくポテンシャルがある。自然環境がよく、温泉もある。海外の人も興味を持つのではないか」と述べ、空き家や空きビルの再生と組み合わせ、街の活性化も進めるとした。
伊豆・東部に担当の副知事か担当戦略監を置く考えを示しており、その狙いについて「規模の小さな自治体が多い。きめ細かくニーズを拾って施策に反映させ、全体をまとめる責任者がいたらいい」と話した。近く出向いて首長らと直接合うなど、対話を進めるという。
知事選では、東部・伊豆の得票数が次点にとどまったことに「前浜松市長が知事になることに漠然とした不安感があったと思う」と分析した。「これから仕事を通じて信頼感を勝ち取っていきたい」と話した。
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