元日の能登半島地震はいつ発生したか? 気象庁は、「16時10分頃」と発表し、政府の地震本部はじめ多くが引用する。だが、どこからを地震の始まりとするか、「実はむずかしい問題」と専門家は言う。
地震の発生時刻や位置、規模を記した気象庁の震源カタログによれば、マグニチュード(M)7.6の地震の発生は、16時10分22.5秒。
その一つ前は、同10分9.5秒でM5.9。非常に近い場所で、13秒前に規模が違う地震が発生していた。
13秒前のこの地震に注目したのが、京都大防災研究所の浅野公之教授。M7.6の地震の始まりの時刻は、こちらではないかと考えた。
地震は、地下の岩盤が、ある面(断層)を境にずれ動く現象で、その際に生じる地震波が遠くまで伝わり各地で観測される。浅野さんはそれをさかのぼり、観測された地震波から、断層がずれ動いた様子を解析で再現している。
結果は、碁盤の目のように区分けされた長方形に示される。長方形は仮定した断層で、各区画のずれの量が表される。
破壊が始まる時刻を、気象庁による16時10分22.5秒、場所は石川県珠洲市の地下から始まったとして解析すると、石川県輪島市など西側の断層に破壊が伝わる時刻と、地震波の観測結果があわない。いろいろ悩んだが、一つ前の13秒前の震源から始まっていた可能性を思いついた。
16時10分9.5秒から地…
- 瀬川茂子
- 科学みらい部|大阪駐在
- 専門・関心分野
- 生命科学、災害、科学全般