瀬川茂子

科学みらい部 | 大阪駐在
専門・関心分野生命科学、災害、科学全般

現在の仕事・担当

技術の進歩が早い科学分野を取材していると、SF世界の話が技術的には可能になっていると知って驚くことがたくさんあります。一方で素朴な疑問がまだ謎であることを知ると、科学の奥深さを感じます。

バックグラウンド

1991年入社。新聞と雑誌、東京と大阪をいったりきたりして働いてきました。

仕事で大切にしていること

長い時間や大きなスケールの科学の話を聞いて、へーっと思ったり、新技術の社会影響に驚いたりしたことを伝えることで、身のまわりを見る新たな視点をお届けできたらいいなと思っています。

著作

  • 『開かれたパンドラの箱 老化・寿命研究の最前線』(朝日新聞出版、2022年)=共著
  • 『巨大地震の科学と防災』(朝日新聞出版、2013年)=共著

タイムライン

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低出生体重児、次世代に与える影響解析 マウス実験 東北大など

 生まれた時の体重が2500グラム未満の低出生体重児は、大人になって妊娠すると低出生体重児を産みやすく、世代を超えた影響があるとされる。東北大などのグループは、肝臓や胎盤の働きが不十分で低出生体重児を産むリスクが上がることを動物実験で突き止めた。薬でリスクを下げられることも確認した。  グループは、妊娠中の胎児にいく栄養が減り低出生体重になるマウスを作成。このマウスは生後も腎臓の発達が遅れ、高血圧になり腎臓障害が起こりやすく、ヒトの低出生体重児の健康リスクを再現した。  健康なマウスは妊娠中に、胎児の成長を支えるために肝臓の働きが増して肝臓が肥大する。低出生体重児が妊娠すると、肝臓の肥大が起こらず、胎盤の血管があまり増えず胎児の成長が遅れた。世代をこえて影響が連鎖する仕組みがわかったとしている。  血流を増やすタダラフィルという薬を与えると、出生時の体重が増え、腎臓の発達や高血圧が改善することを確認した。  「日本では新生児の約10%が低出生体重児で将来の健康リスクをかかえ、次世代にも影響を与えている。低出生体重児の未熟な臓器を正常にする治療薬の開発をめざしたい」と東北大の佐藤恵美子准教授は話している。  論文は米科学誌(https://doi.org/10.1016/j.isci.2024.111159)に掲載した。

4日前
低出生体重児、次世代に与える影響解析 マウス実験 東北大など

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自己免疫にかかわる分子抑えると免疫細胞のがん攻撃効果強まる 阪大

 大阪大の審良(あきら)静男特任教授らのグループは、免疫細胞の一種で、リグネース1という遺伝子の働きを抑えると、がんを攻撃する作用が強まることを見つけた。  リグネース1はグループが2009年に免疫にかかわる遺伝子として発見。炎症を起こす遺伝子のRNAを分解し、炎症を抑える役割をしていると突き止めた。さらに、免疫の司令塔であるT細胞でリグネース1の働きをなくすと、自己免疫病になることもマウス実験で見つけていた。  研究を続け、今回はがん細胞を攻撃するナチュラルキラー(NK)細胞に注目。NK細胞は、インターフェロンガンマというたんぱく質を出すことでがん細胞を攻撃するが、その仕組みはよくわかっていなかった。  そこでNK細胞でリグネース1の働きをなくすと、インターフェロンガンマの働きが上がるとわかった。リグネース1が間接的にインターフェロンガンマの働きを上げる分子を抑えていることを突き止めた。とくにがんの中で、働きが強まる複雑な分子のネットワークもわかった。  がんの治療で免疫チェックポイント阻害剤が効果を上げるには、がんの中にがんを攻撃する免疫細胞が存在する必要がある。NK細胞とリグネース1の働きがわかったことで、効果的な治療法開発につながる可能性があるという。  論文は、米専門誌(https://doi.org/10.1016/j.immuni.2024.05.006)に掲載された。

自己免疫にかかわる分子抑えると免疫細胞のがん攻撃効果強まる 阪大

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2日連続でAI関連 ノーベル賞から考える最新技術との向き合い方

 2024年、自然科学分野の最高の栄誉とされるノーベル賞は2日連続で人工知能(AI)関連分野に決まった。ただ、背景に長年の科学の営みがあっての成果だと専門家は指摘する。巨大な影響力を持つAIと、社会がどう向き合うのかも問われている。  「いつのまにか多くの分野でAIのお世話になっていることが評価されているのだろう」。大阪大の古賀信康教授(たんぱく質科学)は、そう語る。  化学賞では、今回はたんぱく質の設計(デザイン)と構造予測という二つの業績にスポットがあたった。 ■「トイレに行く間に・・・」  受賞が決まった英グーグル・ディープマインド社のデミス・ハサビス氏らのAIによる構造予測について古賀さんは「長年の実験的なデータがあってこそ可能になった」と話す。これまでに世界中の研究者が解明したアミノ酸配列と構造のデータセットがあり、それを学習する素晴らしいAI技術が登場したことで、飛躍的に予測精度が上がったという。  「何年もかかって実験的に構造を決めていたが、トイレにいっている間に予測できるようになった」とその威力を強調する。  一方で、「この技術が誰にでもアクセスできて、創薬に役立つということは、毒も作り出せるということだ。悪意を持った人が使えば毒も作れる」と注意も促す。コンピューターでは自由に設計できても実際に合成する時に、チェックが働くシステムなどが有効に働くような取り組みが考えられるという。 ■具体的なルールはこれから  物理学賞にも、慎重に見ていくべき点があるという。  AI倫理に詳しい北海道大学教授の川村秀憲さんは、「どちらもAI関連だが、意味合いが違う。物理学賞はニューラルネットワークというAIの根幹をなす研究に与えられ、化学賞はこれまで解くのが難しかった問題をAIを手法に用いて解いたというもの」と説明する。  川村さんにとって、より衝撃的だったのは物理学賞の方だ。「人に迫る知能を作り、新しい技術でこれまでできなかったことができるようになるのもあるが、社会に及ぼす影響が大きい」  最近の大規模言語モデルの中には、人と同じように会話できるものや、理工系の博士レベルの知識を持つものもある。人間にかわってオレオレ詐欺ができたり、爆弾の作り方を知っていたりする可能性があり、便利ではあるが社会や人間の脅威になりうるという。  「AIはインパクトを持った技術だが、これから普及していくもの。電気のように社会に普及しきった状況ではない。物理学賞はかなり早いタイミングだと思ったが、これをきっかけに何が許されて何がダメなのか具体的なルールについて大きく議論になっていくのではないか」

2日連続でAI関連 ノーベル賞から考える最新技術との向き合い方
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