パートナーシップ宣誓制度、山口市で第1号カップル

山野拓郎 大室一也

 性的少数者のカップルなどの関係を公的に認める「パートナーシップ宣誓制度」を今年度、山口市が導入した。初日の1日、第1号カップルが宣誓書を市役所に提出した。

 宣誓したのは、市在住のあきらさんとうららさん(ともに仮名)。戸籍上は女性の同性カップルで、2年ほど前から市内で一緒に暮らし、昨年6月に結婚式を挙げた。

 市役所の一室で、2人はパートナーシップ宣誓書受領証を市職員から受け取った。あきらさんは「生まれ育った山口市でパートナーと一緒に宣誓でき、心からうれしい」と話した。

 この制度で、市は宣誓書受領証などを発行し、一方または双方が性的マイノリティーである2人の関係を公的に証明する。双方が成年で、少なくとも1人が市内に住んでいることなどが条件。2人で市営住宅の入居申し込みができるようになり、暮らしの様々な場面での手続きが円滑に進むことが想定されている。民間企業のサービスでも、携帯電話の「家族割」の対象になるなどのメリットがある。

 制度に法的な拘束力はないが、2人は「すごく安心感がある」と話した。

 うららさんは2人の関係について、「世間的に認められていない、パートナーとして見てもらえない」という思いがあり、心の中で「引っ掛かっていた」と振り返る。宣誓したことで「ようやく少し楽になって前に進めたのかな」と笑顔で話した。

 これまで、宇部市など宣誓制度がある他の自治体に引っ越すことを考えたこともあったという。あきらさんは「なんで自分が生まれ育った場所を捨てなきゃいけないんだろう。あきらめたくないと思った。『いつか山口市が』と、ずっとこの日を待ち望んでいた」と喜んだ。

 現在の法制度は、同性婚を認めていない。あきらさんは「結婚は自由。みんなに平等なものだと思う。宣誓制度から進んでいって、皆さんの理解を頂いて、いつか法が改善されて、幸せなカップルが増えていけばうれしい」。

 市によると、この日にもう1組が宣誓した。(山野拓郎)

     ◇

 阿武町も1日、パートナーシップ宣誓制度を始めた。双方が満18歳以上、少なくとも一方が町民であることなどが要件。役場で宣誓すると、町から宣誓書の写しと運転免許証大の宣誓書受領証カードが交付される。役場の窓口手続きでの委任状が不要になり、町営住宅入居の申し込みができるようになる。

 町健康福祉課によると、現在、利用申請の予定者はいないという。町は不動産契約や住宅ローン、病院での面会や手術の同意署名などでの活用を想定しており、企業や医療機関へ協力を求めていくことにしている。

 県は3月19日にパートナーシップ宣誓制度の要綱を公布した。宣誓は県庁や県の出先機関のほかオンラインでも可能で、県内への転居を予定している4カ月前から制度を利用できる。施行は9月1日からで、県は8月中旬ころから宣誓日の予約を受け付ける予定。パートナーシップ制度を既に導入している他県や県内自治体との相互連携も目指している。(大室一也)…

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません