第26回戦争を変えるAI、まるでゲーム 次々割り出す標的、悲惨さ増す前線
今年1月、イスラエルの商都テルアビブ。地中海を望む高層ビルに米データ解析企業「パランティア・テクノロジーズ」のアレックス・カープ最高経営責任者(CEO)の姿があった。イスラエルで初めての取締役会に出席するためだ。
カープ氏や共同創業者で著名投資家のピーター・ティール氏はイスラエルのヘルツォグ大統領や国防省幹部らと相次いで会談。同席した同社幹部のジョシュ・ハリス氏によれば、防空警報が時折鳴り響く中で交渉し、イスラエル軍と「戦争を支援するための技術を提供する」ことで合意した。
朝日新聞の取材に応じたハリス氏は、昨年10月のイスラム組織ハマスへの報復攻撃で、イスラエル軍を本格支援したと明かした。支援の詳細は「言えない」としながら、1月のイスラエル訪問で「我々のシステムが持つ影響力を確認できた」と満足げに語った。
2003年創業の同社は米中央情報局(CIA)とも結びつきが強く、衛星画像のAI解析などで欧米の軍や情報機関と連携。テルアビブの事務所を15年に開設したほか、ウクライナの首都キーウにも事務所を構え、22年のロシア軍侵攻後、ウクライナ軍も同社のAIシステムを戦場で活用している。
パランティア・テクノロジーズは、著名投資家ピーター・ティール氏らが2003年に創業した米データ解析企業。米国防総省や米中央情報局(CIA)のほか、同盟国の軍や情報機関などにデータ解析ツールを提供してきた。同社のサービスをめぐっては、プライバシー侵害や監視社会につながるとの懸念も出ている。19年、パランティアがプロファイリングのためのツールをメキシコ国境の取り締まりを担う移民税関捜査局(ICE)に提供していることに対し、同社の従業員200人以上が反対の書簡に署名したと報じられた。英国の国民保健サービス(NHS)が昨年、パランティアとの大型契約を結んだ際には、患者データの扱いへの懸念から、医師や議員らから反対の声が出た。
同社の担当者がAIシステムのデモを記者に示した。画面にウクライナ東部の地図が映され、「標的」となるロシア軍部隊が青い枠で示される。衛星画像や機密情報、ミサイルの熱を探知する赤外線警戒システムなど膨大なデータから、注目すべき標的をAIが指揮官に提示する。
「例えば、この桟橋を爆撃するとしよう」。別の地図で担当者が赤い三角形の「標的」を選ぶと、AIが攻撃に使える戦闘機のリストを「標的までの時間」「燃料の残量」「搭載武器」などと共に提示した。担当者が重視する項目を選ぶと、最適な順番で戦闘機のアイコンが並んだ。攻撃を指示すると、「実行中」という列に標的のアイコンが移動した。
まるでゲームをしているよう…
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