奈良県のメガソーラー構想 知事の地元説明会で批判相次ぎ反対一色

阪田隼人
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 奈良県五條市に大規模太陽光発電施設(メガソーラー)などを整備するという県の新たな方針について、県による地元説明会が19日夜、五條市内で開かれ、住民ら約200人が参加した。山下真知事は、災害時に非常用電源として役立てる狙いや固定資産税が市に入る利点を強調したが、住民からは批判が相次ぎ、会場は反対一色となった。

 山下知事は冒頭、前知事が進めた「大規模広域防災拠点」計画は実現までの期間が長く、「(2千メートル級の)滑走路ができる前に地震が来てしまう」と指摘。計画の見直しを知事選の公約に掲げた自身の立場を訴えた。

 また、発電設備は固定資産税の課税対象で、20年間で総額約3億8千万円の税収が市に入るという推計を紹介した。地域活性化につながる市内の道路や施設整備の検討状況も明らかにした。

 一方、地元が提供した土地の用途が変更されることに「詐欺にあったようだ」との声があがっていることに触れ、売買契約書の本文には違約金などの定めはなく「契約違反にはならない」と強調。五條市が設備設置にあたり一定のルールを設ける条例化を検討していることに対しても、「財産権の過度な制限で違憲の恐れがある」と牽制(けんせい)した。

 ただ、会場には「メガソーラー絶対反対」と書かれた紙が貼られ、説明の際には怒号が飛び交った。

 質疑応答でも、参加者の一人は「3、4年かけて進めてきた話が水の泡。道義的責任がある」と批判。別の男性は「地権者はどんな思いで土地を手放したか。説明もなく変更するなんて市民を馬鹿にしとる」と怒りをぶつけた。

 終了後、山下知事は報道陣の取材に「(住民側に)感情的な反発があるのは理解できる。これから環境アセスメント環境影響評価)の手続きなどを通じて丁寧に説明し、理解が広がっていくことを期待したい」と話した。

 説明会に参加した男性(70)は「地元に理解をお願いする立場であるはずの知事から、対話姿勢はうかがえなかった。むしろ、法律論を持ち出して威圧するかのような発言もあり、関係が一層悪化したのではないか」と振り返った。(阪田隼人)

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