連日の売春の末、ラブホで客を刺した24歳 知的障害に乗じた男の影
2年前の冬、東京・池袋のラブホテルで82歳の男性が刺されて死亡した。翌日逮捕されたのは24歳の女。当時は「パパ活をしていた」などと報じられた。2年を経て開かれた裁判員裁判では、被告には知的障害などがあり、知人の男らに売春をさせられていたことが明らかになった。
2月6日の初公判。東京地裁の法廷に現れた被告の女(26)は、上下黒のパンツスーツに白いシャツ姿。髪を後ろで団子状にまとめて、黒縁眼鏡をかけていた。
被告は2022年1月21日夜、ラブホテルで被害者の男性の財布から現金約3万円を盗み、男性の胸や太ももをカッターナイフで刺して死亡させたとして、窃盗や傷害致死の罪などで起訴された。
裁判長に認否を問われると、よく通る声で「はい、間違いありません」と認めた。
幼少期から支援受けるも…
弁護側は事実関係や責任能力の有無は争わない一方、起訴前の精神鑑定で軽い知的能力障害があり、注意欠如・多動症(ADHD)の程度が重いなどと診断されたと明かし、その影響で、突発的、衝動的な行動をする特性があったと指摘した。
被告の生い立ちと事件までの経緯を、法廷での証拠や母親らの証言からたどる。
被告は広島県出身で、3人姉妹の長女。「落ち着きがなく、手がかかる子」(母親)で、思ったら行動してしまう、人の物を取る、忘れ物をする、といったことが多かった。学校で同級生からからかわれたりいじめられたりして、校庭に「お前なんか死ね」と書かれたこともあった。
幼少期から医療や福祉とはつながった。6歳で精神科への通院を始め、10歳からは学校が設けた情緒障害児学級に通った。精神障害者保健福祉手帳(2級)や、知的障害がある人に交付される療育手帳(愛の手帳)も取得。中学、高校も特別支援学校に通った。
障害児を預かる「放課後等デイサービス」を利用し、信頼できる職員もいた。
不安定さは常にあった。高校の頃には自傷行為が始まっていた。高校1年の時には「妹とけんかした」という理由で、家族で買い物をしている時に突然、スーパーの屋上から飛び降りた。今も足に後遺症が残っている。18歳の時の精神年齢は「10歳」と判定された。
学校を離れて生活が変化
母親によると、状況が変わり始めたのは高卒後だ。
弁護人「高校を卒業をして何が変わりましたか」
母親「学校の先生と離れることになったのが大きい。放課後デイも18歳までなので、(信頼していた職員と)縁遠くなってしまった」
弁護人「自傷行為の頻度は」
母親「私の知る限りではひどくなったと思う」
自傷行為に加えて、過量服薬(オーバードーズ)や幻覚妄想もあり、度々搬送されたり、入院したりした。入院を嫌がり、母親や医師の目の前でリストカットをしようとしたこともあった。
様々な仕事についた。コンビニエンスストア、大手メーカーの工場、接骨院の受付、スーパー、養鶏場での卵の選別――。この中には、母親の勤務先の社長が障害者雇用の形で雇ってくれたものもあった。
どれも続かなかったが、この社長が就労継続支援B型事業所を立ち上げてくれた。母親も運営に関わる中で、何とか事業所には通った。
環境がさらに変わったのは、22歳の時。被告は女児を出産した。
女児は被告の両親が育てるこ…
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- 【視点】
胸がふさがる思いで読みました。 人の命を奪った罪を擁護するつもりはありません。しかし、女性に売春をさせていた兄弟が罪に問われなかったこと、出産した女児の父親が責任をとっていない(と記事から推察される)ことも含めて、本当に裁かれなければいけ
…続きを読む