「能登にはチャンスが広がっている」珠洲に移転の社長の復興ビジョン
東証プライム上場の医薬品製造販売大手「アステナホールディングス(HD)」の岩城慶太郎社長(46)は2021年、石川県珠洲市に移住し、さらに「珠洲本社」をつくって東京から本社機能の一部を移転させた。現在、個人の活動として、能登半島地震の被災地支援を続けている。フェイスブックで個人の携帯番号を公開し、集めた情報を石川県と共有したり、バスやホテルを手配して被災者の2次避難を呼びかけたり。そもそもなぜ珠洲市に移ったのか、経営者として考える復興のビジョンは何か、聞いた。
――会社経営も多忙だと思いますが、なぜここまでして被災地支援を?
「したいからしている、に尽きます。能登の人たちは『欲しい』じゃなくて、『与えたい』の考えが強いんです。移住前、珠洲市のコテージに泊まったことがあって、部屋の前に白菜が五つ置いてあった。後日、くれた人がわかって、東京で買ったお菓子を持っていきました。そしたら、怒られたんですよ。『お返しが欲しくてあげているんじゃない。あげたくてあげているんだ』って。ハッとして、自分の中のマインドセットがガラッと変わりました。今も能登の人たちのために被災地支援がしたいから、しているんです」
――個人の携帯番号も公開されたそうですね。
「携帯番号を公開したので、被災地に住む面識のない人も含めて、電話が1日に数十本かかってきます。被災者の方に現地の状況や問題を報告してもらう。それをフェイスブックで別の被災者に共有したり、自治体や団体につないだりしていく。僕をハブにして、被災者同士のコミュニティーみたいなものが広がっているイメージです」
――「2次避難」を呼びかけていますが、住み慣れた場所を離れることにちゅうちょする人も少なくありません。
「元の場所で1人で生活できる力がある人は無理に2次避難する必要はないと思います。ただ、子どもや高齢者、持病のある人など、1人で生活するのが難しい人には2次避難をしてほしいです。私も衣食住を1人では完結できないので、いま珠洲に行っても誰かの世話になってしまう。だから、基本は金沢や東京からできる支援をしています。避難した人が戻ってくるときに一番必要なのは仕事。将来に向けて、雇用を生み出していくことも大切だと思っています」
――珠洲市には住むだけではなく、アステナHDの「珠洲本社」も置き、日本酒やスキンケア商品の製造・販売など、積極的にビジネスもしています。
「本州の市で最も人口が少ない珠洲は、日本の最先端なんですよ。珠洲市と同じ『人口5万人以下』『高齢化率40%以上』の自治体を数えたら、全国の約1700自治体のうち、400ほどありました。あと何十年か経ったら、こういう自治体が普通になる。30年後の金沢市や宇都宮市が珠洲なんです。そこで成立するビジネスをつくれば、デファクトスタンダード(事実上の標準)になる。地方創生にもつながる」
「珠洲で年商2千万円のビジ…
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能登半島地震(2024年)
2024年1月1日午後4時10分ごろ、石川県能登地方を震源とする強い地震があり、石川県志賀町で震度7を観測しました。地震をめぐる最新ニュースや、地震への備えなどの情報をお届けします。[もっと見る]