東九州新幹線に新ルート案 知事「有力な選択肢」で宮崎に熱気再び

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中島健 星乃勇介
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 国の基本計画決定から半世紀。棚上げが続く新幹線整備への機運が今年度、政府が打ち出した「方針」をきっかけに再び高まっている。

 九州で新幹線が通っていない大分と宮崎の両県では、大前提と考えられる計画路線の「東九州新幹線」に対し、宮崎県知事が熊本からのルートを「有力な選択肢の一つ」と発言したことで、議論が巻き起こっている。

 「県民の新幹線実現に向けた夢や期待に応えるため」

 宮崎県の河野俊嗣知事が、九州新幹線の新八代駅(熊本県八代市)から宮崎市まで、新幹線を延伸させる新たなルートについて、調査する方針を示したのは、昨年11月末の県議会だった。

 宮崎県内がルートに含まれる基本計画路線は、福岡市を始点に、大分市付近、宮崎市付近を通り、鹿児島市を終点とする「東九州新幹線」だ。四国新幹線(大阪市~四国~大分市)や九州横断新幹線(大分市~熊本市)などと同じく、1973年に基本計画が決定された。

 だが、国は、佐賀県内のルートで議論が続く西九州新幹線などの整備計画路線を優先し、2011年に整備計画に格上げされたリニア中央新幹線を除く11の基本計画路線は、見通しが立たない状態が続いていた。

 流れが変わったのは、昨年6月、重要課題や翌年度の予算編成の基本姿勢を示す政府の「骨太の方針」に、基本計画路線についても「地域の実情に応じた今後の方向性について調査検討を行う」と初めて記載されたことがきっかけだという。

 17年に4県や経済団体などが期成会を発足させた四国では、さらに計画格上げへの要望活動が熱を帯び、大分県も独自に、東九州新幹線で従来想定される「日豊線沿いのルート」と、「久大線沿いルート」の費用対効果などを比較する調査結果を公表した。

 宮崎県も方針を転換。河野知事の説明によると、これまで「ほかのルートを議論すると(東九州新幹線の要望に)差し障ると内部の検討にとどめていた」が、「次なる整備に向けて、幅広く世論を盛り上げていこう」と、新八代ルートの検討を本格化させた。

 県の新年度予算案では、新八代駅から宮崎市までの具体的なルートや事業費、需要見込みなどを調べることになる見通しで、河野知事は、15年に沿線自治体などでつくる期成会が経済効果などを試算した東九州新幹線について、改めて独自調査する方針も示す。

 新八代ルートの考えを初めて表明した県議会では、河野知事はベテラン県議から「行政の常識を超えた対応が必要。これまでの取り組みの延長では突破できない」とたき付けられた。

 県関係者は、22年12月の知事選で、相手候補となった東国原英夫元知事が、日豊線を使うミニ新幹線構想を訴えたことも「意識にはある」とみている。(中島健)

「ほとんどなかった」議論が再燃

 新八代ルートの提起によって、「ほとんど議論がなかった」(宮崎県内の首長)という新幹線整備の議論は沸きたっている。

 宮崎県内では、日豊線沿線の…

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