英平等法の保護対象は「生物学上の女性」 最高裁が判断、差別は禁止

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ロンドン=藤原学思
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 英最高裁は16日、英国の平等法が保護対象とする「女性」について、「生物学上の女性だ」とする判断を判事5人全員一致で決めた。男性として生まれ、女性を自認するトランスジェンダーの人びとが、同法上の「女性」に含まれるべきかが争われていた。

 判決要旨を読み上げた判事は「判決が、ある集団の勝利だと解されることには反対だ」と強調。同法は、トランスジェンダーの人びとに対する差別も禁じるものだ、と釘を刺した。

 英最高裁の同種の判決は初めて。英国や米国のほか、世界的にトランスジェンダーの権利に対する姿勢が厳しくなっており、この判決がトランスの人びとの人権にさらなる影響を与えないかが懸念される。

 この訴訟は、トランスジェンダーに批判的なスコットランドの女性団体が、スコットランド自治政府を相手に起こした。判決の効力はイングランドやウェールズにも及ぶことになる。

 焦点となっていたのは、トランス女性が、2010年に成立した平等法のもとで「女性」として保護対象になるかだった。同法は職場や公共空間において、性別や性的指向に基づく差別を幅広く禁じている。

 女性団体は、女性として生まれた人びとだけが法的な保護対象となるべきだと主張。一方、自治政府は「ジェンダー認定証明書」(GRC)で女性とされるトランスジェンダーの人びとにも適用されるべきだと訴えていた。

 スコットランドの裁判所は22年12月、法的な性別について「生物学的な性別や出生時の性別に限定されない」と判断。女性団体の主張を退け、控訴裁判所も23年11月にこの判断を支持していたが、最高裁では判断が逆転した。

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この記事を書いた人
藤原学思
ロンドン支局長
専門・関心分野
ウクライナ情勢、英国政治、偽情報、陰謀論