第10回「除菌志向」進む日本 「無敵の人」を「無敵」でなくすのは相互接触

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聞き手・左古将規
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識者に聞く京アニ事件③ 評論家・與那覇潤さん

 36人が死亡した京都アニメーション放火殺人事件。裁判では、青葉真司被告(45)の半生が明らかになりました。こうした事件を再び起こさないために、何ができるのか。識者とともに考えます。

 日本近現代史に詳しい評論家の與那覇潤さんは、自身も過去にうつで離職した経験があります。現代日本のどんな潮流が事件に結びついたのか、聞きました。

    ◇

 《自分の人生を振り返ったとき、下着泥棒も、強盗もそう。人とのつながりが完全になくなったときに犯罪行為に走るという共通点があるんです》(青葉被告、昨年9月14日の被告人質問で)

 36人を殺害し、32人を負傷させた青葉被告は、理解不能なモンスターと見なされてもやむを得ません。しかし裁判の記録に接したとき、冒頭に引用したような発言に衝撃を受けました。

 「小説を盗用された」という妄想から凶行に及んだ被告が、自分のことは意外なほど冷静に把握していた。逆に言えば、一定の理性が備わっていたにもかかわらず、犯行を抑えられなかった。どこかで止められなかったかと思うと、言葉にできないむなしさを覚えます。

秋葉原殺傷や安倍氏銃撃との共通点

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 青葉被告自身が認めるように…

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この記事を書いた人
左古将規
ネットワーク報道本部次長|大阪駐在
専門・関心分野
地方、地方行政・政治、教育
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    西岡研介
    (ノンフィクションライター)
    2024年1月24日8時0分 投稿
    【視点】

    前々回の阿部真大さん、そして今回の與那覇潤さんの考察に、共通して出てくるキーワードは「居場所」。

    …続きを読む
  • commentatorHeader
    綿野恵太
    (文筆家)
    2024年1月24日10時4分 投稿
    【視点】

    自分自身は人間関係をわずらしく感じるタイプなので、この記事で指摘される「自己完結志向」「孤独なまま、ネットでだけつながる」社会など一概に否定できないところがあります。  極端な言い方をすれば、人間関係そのものが無くなれば、人間関係に悩

    …続きを読む
京都アニメーション放火殺人事件

京都アニメーション放火殺人事件

2019年7月18日、京都市の京都アニメーション第1スタジオが放火され、36人が死亡しました。京都地裁は2024年、青葉真司被告に死刑判決を言い渡しました。関連ニュースをお伝えします。[もっと見る]

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