「これくらい大丈夫」被災地で我慢する子どもたち 安らげる居場所を
全国の多くの学校で新学期を迎えた9日、能登半島地震の被災地では始業式の延期が相次いだ。学校再開の見通しが立たない地域もあるなか、子どもたちは避難先で様々な我慢をしながら過ごしている。専門家は、子どもが安心して過ごせる居場所が必要だと訴える。
文部科学省は被災地の各教育委員会に対し、家計が苦しい家庭に小中学生の学用品などを補助する「就学援助」の書類が用意できなくても弾力的に対応するなどの支援を要請。また、1人1台の情報端末も活用して学習機会を確保することや、被災した児童生徒を受け入れた学校での臨時健康診断の実施、国費によるスクールカウンセラー派遣事業の活用などを求めている。
民間も支援に動いている。認定NPO法人カタリバは4日、石川県七尾市で子どもの居場所を開設。避難所になったコミュニティーセンターの一室で、元教師らスタッフ数人が見守るなか、子どもたちが縄跳びや読書などをして自由に過ごす。5日には珠洲市にも開設した。
能登半島地震 写真が伝える被災地
2024年1月1日午後4時10分、石川県能登地方を震源とするマグニチュード7.6の地震が発生し、津波や余震、地震に伴う火災により、多くの人命や日常生活が失われました。被災直後から撮影した写真と地図を組み合わせ、被害の状況を可視化します。情報は随時、追加していきます。
プロジェクトリーダーの戸田寛明さん(32)によると、七尾市の住民と連絡を取ってニーズを把握し、支援を希望する避難所があったため4日に開設の準備を始めた。
準備作業では、子どもたちと一緒に地震で散乱した本を片付けた。率先して手伝ってくれた中高生くらいの男子に「ありがとね」と声をかけると、自身の身に起こったことを話し始めた。押しつぶされた家屋から何とか出てきたこと、避難所をいくつも回ったこと、たくさんの遺体を見ながら避難したこと。本当に死にそうになるというのはこういうことなんだ、と思ったこと――。「だからこれくらい大丈夫なんです」と語ったという。
つらいと訴えるのではなく、気丈に振る舞う。豪雨災害など六つの災害現場で支援をしてきた戸田さんは、こうした子どもを多く見てきた。「周りの大人も生活に必死で耳を傾ける余裕がないため、子どもは気持ちをはき出せず、苦しさを抱え込んでしまう」
子ども支援の国際NGO「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」は石川県珠洲市、七尾市、能登町などを回り、マスクやドライシャンプーなどの入った子ども用キットを届けている。「子どももストレスを乗り越えようとしている。意識してだっこや手遊びなどスキンシップを心がけてほしい」と担当の赤坂美幸さんは話す。
災害時の子どもへの支援に詳しい小野道子・東洋大准教授は「被災地の子どもは、友達と会えなかったり、避難所で周囲に遠慮した生活を余儀なくされたりと我慢を強いられる。恐怖や不安もあり、休校で生活リズムが乱れる恐れもある」と指摘。子どもが気持ちをはき出せる場が必要だといい、「遊んだり、静かに勉強したりできる居場所を避難所などになるべく多く設ける必要がある。外部から支援に入る団体は行政や地元団体とつながり、取り組みを広げてほしい」と話す。
子どもの居場所づくりのポイント
・子どもにとって安心・安全な環境であること
例)大きな声を出して遊べる、ゆっくり過ごせて安心を感じられる
・子どもを受け入れ、支える環境であること
例)耳を傾けるスタッフがいる
・地域の特性や文化、体制や対応力に基づいていること
例)支援内容に住民の意見をとり入れる
・みんなが参加し、ともにつくりあげていくこと
例)子ども自らルールづくり
・さまざまな領域の活動や支援を提供すること
例)遊びや学習だけでなく、心の悩みの相談を専門家につなぐなど
・誰にでも開かれていること
例)子どもの障害の有無や国籍に関係なく受け入れる
※日本ユニセフ協会の「子どもにやさしい空間ガイドブック」(https://www.unicef.or.jp/kinkyu/japan/pdf/cfs.pdf)と小野道子・東洋大准教授への取材から
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能登半島地震(2024年)
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