「675年前のタイムカプセル」仏像内の紙、全面に仏の印を発見

西本秀
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 仏像の中に納められた紙には、仏を描いた印が押されていた――。真言宗寺院の明王院(みょうおういん)(広島県福山市草戸町)は27日、国宝の五重塔にまつられている本尊「木造弥勒菩薩坐像(もくぞうみろくぼさつざぞう)」(県重文)の頭の中から発見された和紙の束に、釈迦如来など三つの仏を描いた「印仏」が全面に押されていたと発表した。

 五重塔は南北朝時代の1348年に建立された。坐像も同時期に造られ、和紙の束は完成時に中に納めた「納入品」とみられるという。今年夏、坐像の解体修理を行った際に見つかり、紙質の劣化が進んでいたため、慎重に取り出して内容の確認を進めていた。

 塔ができた675年前の状況を「タイムカプセルのように時空を超えて伝えてくれるのでは」と期待が高まっていた。

 福山市文化振興課によると、納入品は3点あった。一つは、縦23センチ、横16センチの和紙10枚をこよりで束ねたもの。各紙に、釈迦如来と薬師如来、地蔵菩薩を並べて描いた「印仏」が墨色で幾つも押されていた。もう一つは、やや小さな紙束に印仏を押したもの。三つめは一枚紙で、一部に印仏が押されているほか、文字が書かれているという。

 調査にあたった浜田宣・徳島文理大教授によると、多くの印仏は特定の一つの仏の印を彫り、押したものが一般的で、三つの仏を並べて一つの印仏にしているのは珍しい。浜田教授は「三つの仏は過去、現在、未来を象徴する『三世仏』と考えられる。今後も調査を進めたい」という。

 五重塔は当時、多くの民衆の寄進で建てられたと伝えられている。今回の和紙の束に名前が記されず、無数の印仏が押されていることについて、明王院の片山尊之(そんし)副住職は「名も無い方々に支えられて成り立った寺。今回、時空を超えたメッセージを受け取ったようだ」と話している。西本秀

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