銃の自作動画投稿、所持をあおる行為に罰則 安倍氏銃撃受け法改正へ

編集委員・吉田伸八
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 安倍晋三元首相が昨年7月に手製銃で銃撃され死亡した事件を教訓に、警察庁は21日、銃刀法改正の原案をまとめた。ネット上に銃の製造方法を教える動画を投稿するなどして不法所持をあおるといった行為を、新たに罰則付きで禁止する。発射罪の適用対象の拡大や所持罪の罰則強化も盛り込む。来年の通常国会への提出をめざす。

 安倍氏の事件で殺人罪などで起訴された山上徹也被告(43)は、ネット上の投稿サイトの動画を参考にして銃を手作りしたとされる。ネット上には銃砲の製造や譲渡に関する情報が多く、誰でも情報を入手し銃などを作ることが可能だが、情報を規制する法令はない。

 警察庁は今年2月から、ネット上の情報を監視しサイト管理者に削除依頼する取り組みの対象に、こうした情報を追加。今回、特に悪質な情報については法律で規制する必要があると判断した。

 改正原案では、拳銃などの所持罪にあたる行為を公然とあおり、唆す行為を違法と規定する。例えば▽拳銃の自作方法を解説する動画とともに拳銃の不法所持を呼びかける文言を投稿▽ネット掲示板で外国製拳銃を売る旨を銃の種類や価格、連絡先とともに投稿――といった例が該当するとしている。

 銃の製造方法の投稿だけでは規制対象に当たらず、製造や所持にまでつながるような文言が必要だが、実際の所持に至らないケースも対象になるという。罰則は1年以下の懲役を検討している。

 違法な行為のあおりや唆しを規制している例としては、薬物犯罪を対象にした麻薬特例法や、爆発物の使用などを対象にした爆発物取締罰則の規定があるという。

発射罪や所持罪も強化

 改正原案では、安倍氏銃撃事件を受け、発射罪や所持罪の強化も盛り込まれた。山上被告が自作した銃は鑑定の結果、7丁のうち6丁は形状などから「拳銃等」に該当したが、1丁は「その他装薬銃砲」とされた。公的な場所で銃を発射することを禁じる発射罪は現在、拳銃等だけを対象にしており、案では「その他装薬銃砲」や猟銃、空気銃も対象に加える。現在は拳銃等だけが重い所持罪の罰則を、ほかの銃砲についても「人の殺傷目的の場合」、拳銃等と同じに加重する。

 また、今年5月に長野県中野市で4人が殺害された事件で使われたハーフライフル銃と呼ばれる猟銃について、所持の許可基準を厳格化する。(編集委員・吉田伸八

銃刀法改正原案の要旨

▽自作銃を含む銃砲の悪用防止対策

・発射罪の適用対象を「拳銃等」以外の銃砲にも拡大

・「拳銃等」以外の銃砲の所持罪の罰則を強化

・インターネット上などで銃の所持を公然とあおり、唆す情報を禁止

・一定以上の威力がある電磁石銃の所持を禁止

▽許可猟銃の対策

・ライフル銃の定義を変更。ハーフライフル銃に厳しい許可基準を適用

・猟銃を長期間使っておらず許可を取り消せる期間を3年から2年に

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