残土から基準値超える有害物質 新宮のトンネル工事を打ち切りへ

伊藤秀樹
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 和歌山県は1日、新宮市内でのトンネル掘削工事で出た建設残土から、基準値を超える有害物質を検出したため、工事中止を指示したと発表した。掘削を再開しても残土処分に多額の費用が見込まれることから、県は打ち切りに向けて調整に入った。

 この事業は、国道168号の改築工事として、新宮市相賀から同市高田間に仮称2号トンネル(延長2658メートル)を開通させる計画だった。事業費は約70億円。元請けは大成・尾花・川合特定建設工事共同企業体(JV)で、2021年12月に着工し、26年2月の完成を予定していた。

 工事は約1割の掘削を終え、そのすべての区間で有害物質のフッ素は基準値の1・1~3・9倍、ヒ素は基準値の2~5倍が検出された。いずれも自然由来とみられる。

 残土は、ほかの公共工事で活用される予定だった。だが、有害物質を含む残土は県の管理基準にもとづき管理型処分場で処分しなければならず、その場合、処分費用がかかる。残りの工事区間でも同じ地質が続くとみられ、このまま掘削工事を続けると、事業費は最大約270億円まで膨らむ可能性があるという。

 そのため県は、いったん事業を打ち切るため、JV側と協議を進める。残土の処分費用を減らすめどが立てば、再び工事を発注することを想定している。

 県によると、工事前にトンネルの両端で水平ボーリング調査を実施。一部で有害物質を確認したが、県の担当者は「こんなに有害物質が出るとは思っていなかった」と話す。

 今年4月に南東約700メートルの地点で仮称1号トンネル(延長979メートル)が貫通。この工事の建設残土からも基準値を超えるフッ素やヒ素が検出され、事業費は当初の27億円から70億円超に膨らんでいた。仮称1号トンネル工事で有害物質の存在が判明したのは昨年2月。すでに仮称2号トンネルの工事に着手していたという。(伊藤秀樹)

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