性的コンテンツの「表現の自由」どう守る 理想は「良心的な歯医者」

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聞き手・田中聡子

 女性を性的に描いた広告やイラストなどをめぐり、削除や撤去を求める声と「表現の自由」が対立することがあります。表現は法律などで規制されるべきなのか。憲法学者の志田陽子さんに聞きました。

人権重視の市民が表現規制の側へ

 「性的な表現の自由」と「規制」のそれぞれを求める人たちの論争は古くからありました。そして、かつて「表現の自由」を訴えるのは漫画家や出版関係者など表現者だった。ところがSNSによって直接利害関係のない人たちの声が目立つようになりました。今では性的なコンテンツを擁護する人たちが「表現の自由戦士」と呼ばれるようになっています。

 日本にはわいせつな文書などの頒布を禁じる刑法175条が存在します。この条文をめぐって「憲法違反」「規制の範囲が広すぎる」という議論があります。小説「チャタレイ夫人の恋人」が「わいせつ」にあたるとされた事件の裁判では、この規制の目的について「性的秩序を守り、最少限度の性道徳を維持することが公共の福祉の内容をなす」と論じられました。非常にあいまいです。その後も「わいせつか」「有害か」がその時々で判断され、規制されています。

 規制に対して、法律家や、人権や自由を重視する立場の市民が問題視する動きもありました。しかし今は、人権への理解がある人が、逆に表現を規制する側になってきている。悪質ないじめや暴力、差別を受けてきた人にとっては、表現の自由を盾にした「いじめの自由」とも映ります。実際、そうしたいじめは起きてきました。

 こうした懸念から生まれる規…

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