「行きたい」認知症の母に導かれた日本 外交官は母を日本で土葬した

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河野光汰

 200基ほど並んだ墓石に、ウルドゥー語や英語など様々な言語で名前が刻まれている。

 茨城県常総市にあるムスリム墓地。8月下旬、その一角で、祈りを捧げる男性がいた。タヒール・ハビブ・チーマさん(44)。在日パキスタン大使館(東京都港区)で働く外交官だ。来日して約3年半。週に2~3回、都内の自宅から約1時間かけてここを訪れる。

 目の前の墓石にはこう刻まれていた。「べーガム・サフィア・チーマ 1944年1月1日~2020年9月13日」。3年前、76歳で亡くなったタヒールさんの母親だ。「お母さんが僕を日本に連れてきてくれた」。タヒールさんはそう言ってほほえんだ。

 パキスタンの首都イスラマバードにある首相官邸で働いていたタヒールさんが海外勤務を命じられたのは3年半ほど前のことだ。国の派遣で米カーネギーメロン大院で修士号も取り、将来を嘱望されていた。政府内で序列が高いとされる欧米赴任を多くの人が希望するなか、同僚には「好きなところを選べるぞ」と言われていた。

「日本に行かないか」 認知症の母に聞いてみると

 でもタヒールさんが希望した…

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この記事を書いた人
河野光汰
国際報道部
専門・関心分野
事件、国際情勢、スポーツ