なぜ世界が注目? 獣道を淡々と歩く、濱口竜介ワールドの“異端”
ベネチア国際映画祭で濱口竜介監督が「悪は存在しない」で銀獅子賞を得た。ベルリン、カンヌに続き、3大映画祭すべてでの受賞を44歳の若さで達成した。なぜ濱口監督は急激に世界の注目を集めたのか。インタビューとともに魅力を探る。
濱口竜介監督×記者サロン「映画に偶然は存在しない」
濱口監督を招いてオンラインイベントを開きます。ユニークな演出や作劇のほか、『他なる映画と』で扱われている映画史上に輝く傑作や、同世代監督らによる作品について語り合います。濱口監督は映画をどのように見て、学び、作っているか――。
「悪は存在しない」は長野県の自然豊かな町を舞台に、観光施設の建設計画をめぐる人間模様を描く。詩的で静かな世界と、卑近で騒々しい物語が交錯しながら、謎めいた幕切れへとなだれ込む。
――冒頭、まき割りを黙々と続ける主人公が観客の心をつかみます。このシーン、5分もありましたね。
主人公が山深い土地で暮らしていることを5分で伝えられたら、それは安いものだという気がします。一方で、シンプルにこれは観客に楽しんでもらえるシーンであると、自信満々で見せています。
――結局、最初のセリフが発せられるのは映画が始まって10分後でした。
自分の映画としては新記録です(笑)。この映画は、言葉ではなく行動、つまりアクションで成立する社会を描いているということを最初の30分で言っています。会話がないことで表れる親密さや、会話がなくても物事が進むあうんの呼吸を表現しておくと、あとでそれが崩れ、ひび割れる様子を描ける、と思いました。
濱口監督はなぜこんなにも注目されるのか。記事の後半では、今回のベネチア映画祭にも足を運んだパリ在住の映画ジャーナリスト、林瑞絵さんに読み解いてもらいました。
――冒頭の詩的な世界が一転…
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