ノーベル賞のカリコ氏ら会見 「問題解決したいなら科学はぴったり」

フィラデルフィア=合田禄
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 新型コロナウイルスに対するmRNAワクチンの基礎技術を開発したとして、今年のノーベル生理学・医学賞に決まった独バイオ企業ビオンテック顧問のカタリン・カリコ氏(68)と、米ペンシルベニア大教授のドリュー・ワイスマン氏(64)が米東部時間2日昼(日本時間3日未明)、2人が所属するペンシルベニア大学内で会見した。2人が研究を始めたきっかけや、女性研究者へのメッセージも語った。

 カリコ氏は会見の冒頭、1997年にペンシルベニア大のコピー機の前でワイスマン氏と出会い、今回の受賞業績となった研究が始まったことを紹介した。

 カリコ氏は「当時はYouTubeもなく、対面で話を聞くのが唯一の方法だった。すばらしい科学者たちのプレゼンテーションを楽しんだ」と昔といまの研究環境の違いを挙げ、「もっとコピー機を設置して、そこで話す機会を増やさないといけないのかもしれない」と笑いを誘った。

 2人はノーベル委員会からの受賞の連絡があった時の状況も詳述した。発表の約3時間前、最初にカリコ氏の夫が電話をとり、「ドリューと私がノーベル賞を受賞する」と言われたようだが、カリコ氏は「本当かどうか分からなかった」という。

 カリコ氏からメッセージを受け取ったワイスマン氏も「反ワクチンの人たちが私たちをからかっているのではないか」と思った。ワイスマン氏は医療コミュニケーションの分野で働く長女に相談し、正式な記者会見を待つことにした。会見を見て、ようやく本当だと分かったという。

 通常は重大な発見から受賞までに時間がかかることが多いが、今回は短かった。この点について、ワイスマン氏はノーベル委員会の担当者からも同じ質問をされたことを明かし、「自分の人生でノーベル賞を受賞するとは思ってもいなかった。信じられないくらい名誉なことだ」と語った。

 ノーベル財団によると、生理学・医学賞を受賞した227人のうち、カリコさんは13人目の女性となった。女性研究者へのメッセージを問われたカリコ氏は「スポットライトを浴びたければ俳優、指示に従いたいのなら軍隊に入るのが一番かもしれない。お金持ちになりたいなら、私は答えを知らない。でも、もし問題を解決したいと思うなら、科学はあなたにぴったりだ」と話した。(フィラデルフィア=合田禄)

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